三重県情報公開審査会 答申第436号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 審査請求の趣旨
審査請求の趣旨は、開示請求者が平成27年4月13日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「(露店業者である)1.三重県商業協同組合の所在地、代表者氏名がわかる情報、2.三重県商業協同組合の桑名、四日市、鈴鹿、伊賀、津、松阪、伊勢、尾鷲、熊野の各地区の支部の所在地、代表者氏名がわかる情報、3.三重県商業協同組合の桑名、四日市、鈴鹿、伊賀、津、松阪、伊勢、尾鷲、熊野の各地区の世話人の所在地、代表者氏名がわかる情報」についての開示請求に対し、三重県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成27年4月24日付けで行った公文書不存在決定(以下「本決定」という。)の取消しを、実施機関の上級庁である三重県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に求めるというものである。
3 審査請求人の主張要旨
審査請求書、意見書及び意見陳述における審査請求人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
審査請求人は、三重県内の祭りにおける露店商の出店に関する道路使用許可申請書において、「三重県商業協同組合」やその支部名で申請がなされた文書の開示を求めるものである。平成26年度の大四日市まつりにおいては「三重県商業協同組合四日市支部」での団体名による申請がなされたので、他の警察署においても、露店商の組合である「三重県商業協同組合」あるいは「三重県商業協同組合○○支部」での団体名による申請がなされたものが存在するのか否かを調べるために、本件情報公開請求をしたものである。
実施機関は、文書の膨大を理由に当該文書を探していないことを認めているが、三重県内の祭りにおいて、露店の出店に関する道路使用許可の事務は各地域の所轄警察署の担当課で一括して行っているのであるから、当該実務の担当者に聞けば、一目瞭然である。
また、伊賀市においては、「三重県商業協同組合」と同様の団体があると側聞しているし、審査請求人は鈴鹿市内の祭りにおいて、露店に「三重県商業協同組合」の名札を掲げている露店を実際に見ているところであるから、「三重県商業協同組合」は、現実に存在する団体であると思慮される。
4 諮問庁の説明要旨
諮問庁の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
本開示請求においては、具体的な公文書名や作成時期等について特定されていないため、実施機関が、平成27年4月16日に電話により審査請求人に対して本開示請求の趣旨を確認したところ、「平成26年7月29日付けで請求した公文書開示請求(三重県内における露店商に関する協同組合の名称・所在地・代表者・電話番号に関する一切の情報)と同趣旨である。」、「三重県商業協同組合をどのように把握し、管理しているのかを知りたい。」旨の回答を得ている。
なお、平成26年7月29日付けの請求に対して、実施機関は、平成26年8月8日付けの広発第400号で、「実施機関においては、露店商に関する協同組合に係る事務は行っておらず、対象となる公文書は、作成又は取得していない。」として公文書不存在決定を行っており、その情勢は現時点においても変動はない。
よって、審査請求人は、実施機関が露店商に関する協同組合に係る事務を行っていないことを認知しているにもかかわらず、同趣旨の公文書開示請求を実施しているものと認められ、実際に、本県開示請求に対する平成27年4月16日の電話による確認の際にも、審査請求人は、「以前に同じ趣旨の開示請求をしてから日時が経過しており結果が変わるかもしれないと思いますので開示請求をしています。」と述べている。
ところで、実施機関が保有する公文書は膨大に存在し、散在情報として、どこかに露店商に関する協同組合に係る情報が記載されている可能性も完全には排除できないが、「三重県商業協同組合」等の文言の記載があることをもって対象公文書として特定することは極めて困難であり、実際の事務処理上も不可能といえることから、現存する公文書全てについて個々に記載内容を確認する作業は行っていない。ただし、審査請求人による過去の公文書開示請求等で対象公文書を特定する過程において、「三重県商業協同組合四日市支部支部長名」で四日市南警察署長宛てに提出された平成26年度大四日市まつりの露店出店に係る道路使用許可申請書については、偶発的にその存在を認知している。
さらに、審査請求人は、平成27年3月17日付けで、本件開示請求と類似の内容の開示請求を行っており、実施機関は、対象公文書の存在について調査を実施したところ、「三重県商業協同組合四日市支部支部長名」で四日市南警察署長宛てに提出された平成26年度大四日市まつりの露店出店に係る道路使用許可申請書以外の対象公文書は存在しないとの結果を得ている。また、その際に、実施機関から審査請求人に対して電話により、開示請求の趣旨及び(三重県商業協同組合四日市支部の記載がある)平成26年度大四日市まつりの露店出店に係る道路使用許可申請書の必要性(要否)について確認したところ、審査請求人は「平成26年度の大四日市まつりに関する道路使用許可申請書は手元にあるので不要である」と申し立てている。
これらの状況を総合的に勘案して、「三重県商業協同組合四日市支部支部長名」で四日市南警察署長宛てに提出された平成26年度大四日市まつりの露店出店に係る道路使用許可申請書を本件審査請求に係る開示請求の対象公文書から除外し、本件公文書不存在決定を行ったものである。
なお、本件公文書不存在決定通知書の「公文書が存在しない理由」には、「実施機関においては、三重県商業協同組合及び同支部の所在地、代表者氏名等を管理する事務を行っておらず、対象となる公文書は、作成又は取得していないため存在しない」と記載されており、実施機関は、その説明責任を果たしているものと認められる。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
審査請求人は、三重県内の祭りの際に提出された道路使用許可申請書のうち、「三重県商業協同組合」やその支部名が申請者となっているものについて開示請求を行ったものであるため、それらの調査を行わず、不存在決定を行った実施機関の判断は妥当ではないと主張している。
これについて実施機関から聴取したところ、審査請求人は、本開示請求(平成27年4月13日付け請求)の前に「三重県商業協同組合」やその支部名が申請者となっている道路使用許可申請書に関する開示請求(同年3月17日付け請求)を行っており、それに対して実施機関は、各警察署で調査を行い、不存在決定を行っている。そのため、本開示請求の意図を審査請求人に確認したところ、「実施機関が三重県商業協同組合をどのように把握し、管理しているのかが分かる文書」の開示請求であるとの回答を得たことから、本件対象公文書について、不存在決定を行ったとのことである。
したがって、本開示請求の対象公文書について、「三重県商業協同組合」やその支部名が申請者となっている道路使用許可申請書ではなく、「実施機関が三重県商業協同組合をどのように把握し、管理しているのかが分かる文書」と特定したという実施機関の説明に特段、不自然、不合理な点は見られない。また、そのような公文書を保有していないという説明についても不自然、不合理な点は見られず、本件対象公文書が存在しないとする実施機関の主張は、信用できるものである。
以上のことから、本件対象公文書が存在すると認める理由はなく、不存在とした本決定は妥当であると認められる。
(3)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 5.15 |
・諮問書の受理 |
27. 5.19 | ・諮問庁に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 6.15 | ・理由説明書の受理 |
27. 6.24 |
・審査請求人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27. 6.30 | ・審査請求人からの口頭での意見陳述申出書受理 |
27. 7. 2 | ・審査請求人からの意見書受理 ・諮問庁に対して意見書(写)の送付 |
27. 8.20 |
・書面審理 (平成27年度第4回A部会) |
27. 9.15 | ・審議
(平成27年度第5回A部会) |
27. 10.27 |
・審議 (平成27年度第6回A部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
※委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
※委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |