三重県情報公開審査会 答申第430号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年3月11日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った、平成26年9月9日に三重県環境生活部交通安全・消費生活課(消費生活センター)に配達されている特定記録郵便の収受状況と措置結果に関する記録と参考事項記録についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、本決定通知書中に請求内容に該当する文書への言及がないのは不当であるとして異議申立人が取消しを求めたものである。
3 異議申立ての理由
異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
当該特定記録郵便は、津中央郵便局の取扱履歴一覧において「お届け先にお届け済み」とあり、三重県交通安全・消費生活課宛てに配達されているはずである。
県には「書留郵便物その他特別の取扱いによる郵便物」の収受の際には「封筒に県収受印を押して特殊文書収受簿に記入し、本庁課に配布して受領印を受ける」との規定(三重県公文書管理規程)がある。本件の特定郵便物は「その他特別の取扱いによる郵便物」にあたるので、同条項にある各過程での確認がなされたはずである。この点への言及がないのは不当であり、説明責任を果たしていない。
仮に、特定記録郵便が「その他特別の取扱いによる郵便物」でないとしても、どのようなものがこれに当たるかを明示すべきである。
部分開示された文書は、特定郵便記録で配達された文書そのものでなく、その文書の存否の調査のやり取りを記した文書である。そのため、決定通知書で開示請求の対象としている特定記録郵便で配達された郵便物の存在の判断を明記していないのは不適切である。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定は妥当というものである。
特定記録郵便について探索を重ねたが、発見できなかった。
また、特定記録郵便は、三重県公文書管理規定に定める「その他特別の取扱いによる郵便物」にはあたらないことから、収受の記録は行われていない。
開示請求に対して開示する公文書(「参考事項記録」)が存在することから、部分開示した公文書以外のものが不存在であることまでは決定通知書に明記する必要がないと考える。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
異議申立人が請求した公文書の内容には、参考事項記録だけでなく特定記録郵便についての収受状況や措置結果の記録(特定記録郵便で配達された郵便物の存在の判断)も含まれ、通常、実施機関はこれらを開示対象公文書として特定することとなる。
しかしながら、実施機関は、特定記録郵便で配達された郵便物については探索を重ねても発見できず、また、三重県公文書管理規程において「その他特別の取扱いによる郵便物」に含まれず収受記録もないとする。係る実施機関の説明に特段不合理な点は認められず、当審査会は実施機関が対象公文書を保有していないと判断せざるを得ない。
また、異議申立人が、開示請求の対象としている「特定記録郵便で配達された郵便物の存在の判断」を決定書中に明記していないのは不適切であると主張している点について、条例第12条第2項では、「実施機関は、開示請求に係る公文書の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき及び開示請求に係る公文書を保有していないときを含む。以下同じ。)は、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。」と規定されている。当審査会としては、本事案のように開示請求に係る公文書の一部が不存在である場合の措置について、開示する文書のみに係る部分開示決定で足り、不存在の決定を行う必要はないものと考える。
以上のことから、本決定は妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 意見
審査会の本件異議申立てに対する判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
本事案のような開示請求に係る公文書の一部が不存在である場合については、県民への説明責任をより果たすためには、決定通知書の備考欄を活用し、その旨及び理由の記載を行うべきであると考える。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 4.22 |
・諮問書の受理 |
27. 4.23 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 5.13 | ・理由説明書の受理 |
27. 5.18 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27. 6.19 |
・書面審理 (平成27年度第2回B部会) |
27. 8.25 |
・審議 (平成27年度第3回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
※会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
※委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
※委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |