三重県情報公開審査会 答申第429号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年1月13日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「中勢沿岸流域下水道(志登茂川処理区)ポンプ機械棟(土木)建設工事の出来高払いに関する全ての文書について」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が、平成27年1月22日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 異議申立ての理由
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
工事の出来高検査時に、業者に必要な証拠書の提出を求めて書面や記録を検査するものであるにもかかわらず、対象の工事関係書類や記録を完成検査までの長期間、請負業者に返戻して保管させているため開示対象としないことは、公文書管理規程に反し、県民への説明責任を果たせない。検査の信用性、工事目的物の品質確認の上でも重大な欠陥であり、いったん検査時に提出した工事関係書、記録を請負業者に提出させ開示すべきである。
4 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定は妥当というものである。
出来高検査は、「三重県公共工事共通仕様書(平成24年7月)」(以下「仕様書」という。)の規定に基づき実施しており、仕様書では、工事管理状況について、書類、記録及び写真等を参考にして検査を行うものとなっている。一方、受注者が行う施工管理については、受注者がその記録及び関係書類を直ちに作成、保管し、工事完成報告書提出時に提出しなければならないとなっている。
このため、発注者は、受注者から出来高に関する資料(工事出来高内訳書、図面等)を徴するとともに、書類や写真などの提示を求め出来高検査を実施し、出来高検査終了後は提示を求めた書類や写真などは受注者に返却し、受注者が工事完成まで保管することとなる。
以上のことから、開示を実施した日時には、異議申立人が開示を求める「検査時に提出した工事関係書、記録」について、実施機関は保有しておらず、開示の対象とはならない。
これらのことから、受注者から徴した出来高に関する資料(工事出来高内訳書、図面等)を部分開示としたものである。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)本決定の妥当性について
本決定で実施機関が特定した公文書は、「出来高部分検査要求書及び工事出来高内訳書」及び「出来高検査復命書」であるが、本件異議申立ての対象となっている文書は、実施機関が保有していないことを理由に不存在とした「出来高検査時に請負業者が提示した工事関係書、記録(以下「本件対象文書」という。)」である。
そこで、本件対象文書が不存在であるとして本決定を行った実施機関の判断の妥当性について、以下検討する。
条例第2条第2項において「『公文書』とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。」と定められている。「当該実施機関が保有しているもの」とは、実施機関が当該文書を現実に支配、管理していることを意味するが、文書を現実に支配、管理しているというためには、当該文書の作成、保存、閲覧・提供、移管・廃棄等の取扱いを判断する権限を現実に有している必要があり、一時的に文書を預かっている場合には、当該文書を現実に支配、管理していると解することはできない。
検査時において、受注者に提示を求めた書類や写真などについて、出来高検査終了後に受注者に返却しているため、本件対象文書を実施機関は保有していないとする実施機関の説明に特段不自然な点は認められない。
したがって、本件対象文書は条例第2条第2項の「公文書」に該当するとはいえず、本件対象文書を不存在とした実施機関の判断は、妥当である。
(3) 結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会の意見
審査会の判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
本件事案において、現行制度のもとで、実施機関が適正に出来高検査を行ったと説明できる書類は保有しており、国等においても出来高検査時に同様の処理を行っていることが認められるが、県民に対してより一層の説明責任を果たすため、出来高検査時に受注者から提示された書類等のコピーを取るなど、公文書として保有することについて、全国の状況も注視しながら検討するよう努められたい。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
_別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 3.17 |
・諮問書の受理 |
27. 4. 3 | ・理由説明書の受理 ・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27. 6.19 | ・書面審理 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・実施機関の補足説明 ・審議 (平成27年度第2回B部会) |
27. 8.25 |
・審議 (平成27年度第3回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
※委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
※委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |