三重県情報公開審査会 答申第425号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った決定は、妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成26年12月24日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行ったリサイクル製品認定基準適合状況報告書についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が、異議申立人(開示請求者ではない者)の情報が含まれる「リサイクル製品認定基準適合状況報告書」(以下「本件対象公文書」という。)を対象公文書として特定し、開示請求者に対して行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、条例第17条第1項に規定する第三者である異議申立人が取消しを求めるというものである。
3 対象公文書について
実施機関は、本請求に際し、本件対象公文書に異議申立人の情報が含まれていることから、条例第17条第1項の規定に基づき、異議申立人に対して意見照会を行ったうえで、本決定を行った。
実施機関は本決定を行うと同時に、反対意見書を提出した異議申立人に対し、取引に関する具体的な数量や金額を除き、条例第7条第3号(法人情報)に該当しないとの理由で、条例第17条第3項の規定に基づき本件対象公文書を開示する旨を通知したところ、異議申立人から本件異議申立てが提起された。
なお、本請求を行った開示請求者に対しては、本件異議申立てに係る決定に至るまで異議申立てに係る部分の開示を停止する旨の通知がなされているが、それ以外の部分については、開示がなされている。
4 異議申立ての理由
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
異議申立人は、本件対象公文書にあるリサイクル製品の販売会社以外の同業他社とも取引を行っており、この販売会社との取引があることが公になると、今後同業他社からの工事受注に影響が出て工事が減り、利益を損なう恐れがあり、法人の競争上の地位その他正当な利益を害する。
5 実施機関の説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
本件対象公文書に記載された情報のうち、取引に関する具体的な数量や金額を除き、法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められない。
購入するリサイクル製品の選択については、公共工事等で必要とされる品質等に適合していれば請負業者の裁量に委ねられており、必ずしも特定の業者との取引を指定しているものではなく、実施機関は取引数量や金額を非開示としており、異議申立人の競争上の地位や正当な利益を害するものとは考えられない。
また、三重県リサイクル製品利用推進条例による取引先を公表することによる公益と異議申立人が主張する法人の不利益とを比較衡量すると、公益の方が大きい。
なお、本件対象公文書に同様の取引が記載されている業者13社(異議申立人を含む。)に条例第17条第1項の規定に基づく第三者照会を行ったところ、全部開示を了承したのは6社、意見書の提出があったものの施工数量、施工金額及び販売数量を非開示とすることで了承したのは6社となっている。
これらのことから、部分開示としたものである。
6 審査会の判断
(1)基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
(2)条例第7条第3号(法人情報)の意義について
本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。
しかしながら、法人等に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康または財産を保護し、又は違法若しくは著しく不当な事業活動によって生ずる支障から県民の生活を保護するために公にすることが必要であると認められる情報、及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書きにより、常に公開が義務付けられることになる。
(3) 条例第7条第3号(法人情報)の該当性について
異議申立人は、「取引があることが公になると、同業他社からの工事受注に影響が出て工事が減り、利益を損なう恐れがある」と主張している。今回、同様の情報が記載された事業者に対し、第三者照会を行ったところ、異議申立人を除けば全部開示または施工数量、施工金額、販売数量を非開示とすることで了承している。しかしながら、一般的な商取引において、取引先情報は重要な営業情報であり、このような取引先情報が開示されることにより、工事受注に影響が出る可能性が全くないと断言することはできない。
したがって、当該情報は本条本号に該当する。
(4) 条例第7条第3号(法人情報)ただし書ハの該当性について
一方、条例第7条第3号ただし書ハは、法人に関する情報であっても「公益上公にすることが必要であると認められるもの」については公開の対象となる旨規定している。これは、法人に関する情報には、当該法人の利害関係を超えて、県民生活に少なからざる影響を与え、又は与えうるものがあり、公益上公開するのが相当であると考えられるものがあるが、その場合には、公益と一方これを公開されることによる法人の不利益とを比較衡量した結果、なお公益の方が大とされたものを、条例第7条第3号の例外として公開の対象とする旨定めたものである。
三重県リサイクル製品利用推進条例(以下「リサイクル条例」という。)は、リサイクル製品の利用を推進し、リサイクル産業の育成を図り、資源が無駄なく繰り返し利用され、環境への負荷が少ない循環型社会の構築に寄与することを目的とした条例であるが(同条例第1条)、リサイクル製品の品質及び安全性を維持するため、同条例は認定生産者に、認定基準への適合状況を試験または検査し、認定基準に適合することを証する書類の提出の義務を課す(同条例第11条第2項)など、認定生産者の義務等を規定している。
リサイクル製品は、資源の有効利用の確保や再生資源等の適正処理により生活環境の保全及び県民経済の健全な発展に大きく寄与する一方で、不適切な取組は県民等の生活環境等に深刻な影響を与えることとなる。
以上のことから、リサイクル条例の趣旨や、リサイクル産業に内在する社会的責任、社会情勢等に照らして総合的に勘案すると、非開示により保護されるべき法人の事業活動上の利益よりも、開示されることにより、リサイクル製品の利用状況等を明らかにしておく県民等の公益の方が、当該法人の利害関係を超えてなお優先され、公開を認めるのが相当であると判断せざるを得ない。
したがって、当該情報は条例第7条第3号ただし書ハに該当し、実施機関が開示とした判断は妥当である。
(5)結論
よって、主文のとおり答申する。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
_別紙1
審査会の処理経過
年 月 日 | 処理内容 |
---|---|
27. 2.23 |
・諮問書の受理 |
27. 2.23 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
27. 3.16 | ・理由説明書の受理 |
27. 3.17 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
27. 5.29 |
・書面審理 (平成27年度第1回B部会) |
26. 6.19 |
・審議 (平成27年度第2回B部会) |
三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
---|---|---|
※会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
※会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
※委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学准教授 |
※委員 | 藤本 真 理 |
三重大学人文学部准教授 |
委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。