小林裕司と申します。インドネシアの西にあるスマトラ島、その北部に位置しスマトラ島最大の都市である北スマトラ州メダン市(人口約253万人)において、ボランティア活動として環境教育に取り組んでおり、これからインドネシアや活動内容について定期的に報告していきます。
メダンの位置 出典:外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/index.html)
日本とインドネシアの比較
インドネシアは、経済成長により国際社会における存在感が高まっている国であり、主要な新興市場国としてG20に参加するなど、ASEANのリーダー的役割を担っています。日本 | インドネシア | |
面積 | 約38万㎢ | 約192万㎢ |
気候 | 温帯気候など | 熱帯性気候(赤道が通る国) |
人口 | 約1.2億人 | 約2.7億人(世界第4位で約300の民族を有し、イスラム教徒が最も多い国) |
国民総所得 | 約4万米ドル | 約4千米ドル |
そんなインドネシアですが、さまざまな環境問題を抱えており、その中で私が主に取り組むのが「ごみ問題」です。インドネシアは「プラスチックごみの海洋流出量」が世界第2位です。(出典:Plastic waste inputs from land into the ocean, Science (2015))
日本 | インドネシア | |
ごみ総排出量 (世界銀行統計) |
42,720,000トン (一人当たり年間約356kg) |
65,200,000トン (一人当たり年間約241kg) |
ごみ回収および処理の仕組み (主なもの) |
回収拠点で分別回収→リサイクル可能なごみをリサイクル→残りの焼却可能ごみを焼却→焼却灰や残ったごみを埋立 | 家の前のごみ箱もしくは路肩ごみ(清掃人がポイ捨てごみなどを路肩に集めたもの)を混合回収→埋立(※) (一部はリサイクル) |
ごみに対する 住民の感覚 (主なもの) |
分別回収によるリサイクルやポイ捨て禁止の意識が培われ、分別に協力しない行動やポイ捨ては一部にとどまる。 | 「ポイ捨てごみは清掃人が掃除するもの」という考えや「ポイ捨てしたごみがどうなるか」というところまで思いが至らないことなどにより、ポイ捨てを問題視する住民は少ない。 |
街中における投棄ごみと、ごみ回収の様子
JICA海外協力隊(環境教育)としての活動内容
配属先は「北スマトラ州環境林業局」です。インドネシアにおける関係手続の影響により、配属先への勤務が2023年12月にずれ込みました。配属先からは、メダン市内における環境教育教材がないとのことで「小学生を対象とした教材作成および環境教育授業の実施」を指示されました。以下の内容で教材を作成し、配属先活動外の活動として、イスラム教徒の地域住民が集まる集会の場で試行してみたところです(インドネシア語のカンペを見ながらですが…)。今後、配属先活動としてメダン市内の小学生を対象とした環境教育授業を実施していく予定です。
ちなみに、教材作成に際して「メダンにおけるリサイクルの大まかな仕組み」を教えてほしい旨を配属先職員に依頼し、教えてもらうまでに約2か月を要しました(何度も催促してようやく教えてもらえた状況)。インドネシア人は全般的におおらかな印象ですが、仕事に関する意識のギャップを実感した数か月となりました。
時間:60分間
内容:ごみ問題(時間の都合で、汚水処理や産業廃棄物などは除外)
<ポイ捨ての禁止>
・ポイ捨てごみが海岸に流れ着くまでを、目を閉じて頭の中で想像する。
・ポイ捨てによる影響(動物による誤飲、捨てたプラスチックごみがマイクロプラスチックとして
人間の体に戻ってくることなど)、ごみの種類によって分解に長い期間を要するごみがあることを知る。
・ごみをポイ捨てせずにごみ箱に捨てることができるようになる。
<ごみを減らす>
・メダン市の最終処分場と残余年数を把握し、ごみ埋立に限界があることを知る。焼却によってごみの量
は減るが、混合ごみの野焼きによる健康被害の危険性を知る。
・身近にできる取組として、マイボトルやマイバッグといった物々を繰り返し使用することなどによりごみ
を減らすことや、必要な物を買う際にはエコラベルなど環境に優しい商品を選ぶことを知る。
<リサイクル活動への参加>
・缶、びん、ペットボトルを例に、リサイクルの流れを知る。鹿児島県大崎町のごみ分別方法を例に、リサ
イクルを含めたごみ処理の仕組み(例:売却可能なごみをリサイクル業者に売却→残りのリサイクル可能
なごみを業者に買い取ってもらう→最後に残ったごみを最終処分場に埋め立て)を知る。
・ごみ銀行(※)の制度を知り、リサイクルのきっかけとしてまずはごみ銀行に参加してみる。
※インドネシアにおけるリサイクルシステムで、住民がリサイクル可能なごみを回収拠点に持ち込み、お金
に交換するもの。
教材:パワーポイントスライド×10枚
Sunggal地域のイスラム住民に対する環境教育授業の様子
目を閉じて、ポイ捨てされたごみの行方を想像する
三重県の紹介及びPR
上述の住民向け授業や、配属先において環境に関する日本の制度等を紹介する際に、併せて三重県の概要と主な観光地を紹介しました。インドネシアにおいては日本の忍者アニメが人気であり、伊賀市の紹介に興味を示されます。また、三重県で生活しているインドネシア人の数(2,500人強)を伝えると、たくさんのインドネシア人が住んでいることに驚かれます。
今後も機会を捉えて、三重県の紹介およびPRを実施していく予定です。