みえ国際協力大使 鈴木 慎一朗さん からの活動報告 その1
赴任国:南アフリカ共和国 職種:科学 2017年3月派遣
はじめに
サウボーナ!ンジャーニ?(こんにちは!元気ですか?)私は2017年3月末から青年海外協力隊として派遣されている鈴木慎一朗です。私の任地は南アフリカ共和国と言う国のリチャーズベイという街になります。科学という職種で派遣され、職場はユニズルサイエンスセンターと呼ばれているズールーランド大学付属の科学館です。こちらに派遣されてちょうど1年が経過しました。今回はこちらの生活や活動の一部を報告させていただきます。任地リチャーズベイについて
さて冒頭のあいさつですが、これは私の住む地域で話されるズールー語という言葉です。南アフリカには公用語として認められた言葉は英語も含め11言語もあり、それぞれの地域で使われる言葉は違います。全国的に英語は通じるので、英語と地域の言語が併用されていることが多いです。リチャーズベイがあるクワズールナタール州は、ズールー語と英語になります。はじめてズールー語を聞いたときに驚いたのは、クリックサウンドです。つまり、舌打ちのような音が言葉として使われています。聞くところによると、そのクリックサウンドにも種類があって、なかなか聞き分けるのが難しいです。そんなズールー語があふれるリチャーズベイは、協力隊員の仲間内では少し珍しいことに、中規模程度の地方都市です。大きな輸出港を持っており、主な輸出品のなかでも石炭は、世界でもトップクラスの取引量を誇っています。街中にも製紙工場や重機製造工場、アルミの工場など、多くの産業が集まっています。周辺には住宅街も多く、立派な家や、日本でも高級な車を見ることもしばしばあります。ショッピングモールもあり、南ア第二の都市であるダーバンも、車で2時間ということで生活に困ることは少ないです。
その近所のモールには、日本と同じように南アフリカでメジャーな食料品・カフェやレストラン・ドラッグストア・医療・家電量販店のチェーンが揃っていて、週末には混み合っています。でも、そこから一歩出てみると、アフリカらしい色合いのデザインが施された服を扱う露店があったり、アフリカ各国でいろいろな名を持ち南アではパップと呼ばれる主食を扱うお店があったり、周辺都市を結ぶ乗り合いタクシーの大きな乗り場があったりと、また違った活気があふれています。

近所で一番大きなモール

モールの外にある露店

タクシーランク(乗り場)

トウモロコシの粉を練って作るパップ
仕事について
アフリカの国々の中でも南アフリカというと、日本でもなじみがあるほうの国だと思います。アフリカ大陸でみても経済的に大きく発展している都市もあります。ヨハネスブルグやケープタウンはテレビやインターネットで見聞きしたことあるのではないでしょうか。2010年にはワールドカップも開催されていましたね。そんな発展している印象がある一方、問題も多く抱えています。その中の一つが教育です。南アフリカでは理数教育の理解度の低さが問題になっています。一説にはアパルトヘイト時代の影響であるとされ、当時は白人が優位に立つために、黒人へ特に理数科目の教育を削ってきたからとされています。
私の所属する科学館をはじめ、南アフリカの科学館では連携しながら、子供たちが理数科目に興味を持ってもらえるように様々な取り組みをしています。

モールでの出張展示の様子
その中で私の仕事は、科学館が所有する展示品の修理・改善・制作です。年間で3万人の生徒が訪れる当科学館では数多くの展示品がありますが、いくつか故障により動いていないものが見られます。メンテナンスを担当する科学館スタッフがいますが、館内の案内役も兼務しており、時間がかかりそうなものをため込んでいるような状況でした。赴任当初からそこのフォローとしていくつか修理を実行していきました。多くの展示は手を付けてみると簡単な故障が多く、部品交換で済むことが多かったです。全く同じ部品が手に入ることは難しいですが、工夫次第で修理は可能でした。
そして溜めていた故障が一段落しつつあるいま現在、取り組んでいるのは制作です。協力隊の元となったアメリカの米国政府の国際ボランティア活動機関・米国平和部隊(ピースコー)と協力して、数学を学ぶ展示を制作しています。最近ようやく試作品ができ評価を受けたので、サイズを大きくして常設の展示にしようと図面を引く段階です。
Binary Adding Machineという、2進数を利用して足し算をしていく展示です。ビー玉を使い63までの答えを表すことができます。日本人でも2進数を見る機会は少ないので慣れないと思います。これはパソコンなどにも使われているものなので、これからの子供たちには理解してもらうことが大切です。

Binary Adding Machine
モーターの仕組みを表した展示は、ケーブルの断線や部品の緩みで長期間動いていませんでした。それぞれ対応し調整をすることで、今は動いています。

モーターの構造展示
この1年で大きな出来事は、日本への出張でした。
2017年11月にSCWS(Science Center World Summit)と呼ばれる、3年に一度の大きな国際カンファレンスが東京で開催され、私の上司や同僚も出席し講演を行いました。このカンファレンスには98か国から関係者が参加し、「世界をつなぐ-持続可能な未来に向かって」をメインテーマにセッションが展開されました。
私自身はカンファレンスに参加できなかったのですが、日本へ同行して東京都内を案内することで、少し日本のことも紹介することができたかなと思っています。同僚とのコミュニケーション以外にも世界中の科学館スタッフとも交流を図れたのもいい経験でした。

SCWSの会場だった東京都の科学未来館

おもちゃミュージアムでけん玉に挑戦中

河口湖周辺で秋の富士山観光
帰国後、出張で見つけた展示にできそうなタネを早速試作品にしてみました。紐で吊った枠でビー玉を運ぶゲーム。穴に落とさず運ぶのが意外と難しいのです。上司たちのウケも上々で、こちらももう少し大きな常設展示にしてみようと思っています。

日本の出張でインスパイアを受けて作った試作品
今回の報告はこの辺りで。
次回は、南アフリカならではのサファリや美しい風景もお届けします!