みえ国際協力大使 小林加奈子さんからの活動報告
赴任国:ネパール 職種:IT講師 2013年1月派遣
「Tihar(ティハール)」~計画停電実施中、それでも電飾の美しいネパールの祝祭~
JICAボランティアとして派遣される2年の任期も終盤となりました。1年に1度は活動や任国の情報をお伝えする心積もりでいたのですが、住んでいるところの事情もあり今回が最初で最後の報告となりそうです。私の過ごしたネパールで心に残る祝祭のTihar(ティハール)について簡単に紹介したいと思います。
報告内容
ネパールでは都市部で計画停電が実施されています。水力発電に頼る電気通信事情はあまりよくないのです。季節によって1日7~15時間程度、電気が供給されない暮らしをいろいろな工夫とともに過ごしてきました。10月下旬には灯明(電気)で神様の来訪を促すお祭り、ティハールがありました。街の建物には電飾が見られ、この期間は計画停電の時間も予定より短くなっているようです。
この季節、朝夕うっすらと霞がかった日が多いのですが、日暮れになり始めて電飾が点ると祝祭の雰囲気が高まります。本来は灯を窓や扉のあるところに置いて、各家庭の中(ほとんどが最上階)にある神様をお祀りしているところ(プジャコティ)まできていだだけるようにしるしをしておくようです。くわえて窓や扉には花飾りもつけられます。
祝祭は数日間続くのですが、最初はカラスの日、次は犬、そして牝牛と決められていて、私のお世話になっているお家に犬が飼われているので、お祝いの花輪と色粉、食べ物が与えられていました。
そして建物の電飾よりもさらに工夫が凝らされるのが各戸の前の模様(ランゴリ)です。この地域では新年にあたるこの日、入り口の扉の前にこのお宅のお嫁さんおふたりが数種類の色粉をつかって丁寧に鮮やかなランゴリを描いていました。ランゴリが完成すると、その前に灯を置き、プジャコティまで線を引いてお迎えの準備ができたことになります。
そして迎えた夜は家族が揃います。家長の兄弟とその家族、家長の姉妹が集い(私のお世話になっているお家は総勢14人と犬1匹でした)、この日、女性は男性に対する儀式の担い手となります。台所(食事をする場)に全員が揃ったら、ここでもやはり灯を使って長命と健康を願い、儀式を終えて首にかける祈願の飾りと甘いお菓子や果物などの食べ物がそれぞれに与えられます。そして夕食が始まります。サマエバジと呼ばれるセット(干し米、肉・野菜のおかず、漬物、ヨーグルトなどを1皿に盛り付けるもの)を皆で頂きます。
サマエバジを食べ終わると、外の電飾を眺めながらの近況報告に花が咲きます。ここから酒宴の開始とうことになるのですが、女性の飲酒は禁忌のようで、男性主体の時間となっています。
ネパールで必ずといっていいほど話題になるのは親戚の誰かが日本に行っている(または行っていた)ということ。ここでもやはりその話題になりました。私の出身地は津であること、津は三重県にあり三重県は日本の中部に位置することを説明すると、親戚のうちのひとりが名古屋に住んでいるといいます。名古屋から三重県は近いからぜひ遊びにいってみてください、とお勧めしておきました。
電気通信事情だけでなく水の供給も不安定で日常生活も大変でしたが、IT講師として赴任してコンピュータを使える時間が本当に限られていてとても苦労しました。けれど、ここにいる人たちと話すこと、特にこのティハールはとても貴重な体験です。その笑顔を糧に、残りの任期を終え無事に帰国しようと思います。
2014年11月 小林加奈子