折り紙活用報告
青年海外協力隊 平成21年度3次隊
ウガンダ 派遣 野菜栽培
磯川 麻里
1.活動概要とウガンダ生活
私の配属先は、首都カンパラから70km西のミティアナというところにある有機農業普及団体(NGO)で、配属先モデル農場の美化・改善や新作物・技術の紹介、付属専門学校での学生への指導などが主な活動です。また、週に一度、近隣小学校での授業や農家の巡回指導も行っています。分かりきっていた事とはいえ、やはり最初は、言葉・食事・習慣など文化や感覚の違いに戸惑い悩みました。それに加え、乾季・雨季の二季があるウガンダの気候は、赤道直下にも関わらず標高が高いために朝晩は肌寒く、日中は痛いほどの日差し、かと思えば時として雹も降るという、全く馴染みのないものでした。異文化における生活や予測不能な自然が相手の活動、何もかもがとにかく不安でした。
しかし、1年半が経った今、本報告を書きながら何をそんなに悩んでいたのかと笑ってしまうほど、現在のこの生活が当たり前のものとなっています。時の経過による慣れはありますが、何より、人の優しさが一番の支えでした。身近なウガンダの人々はとてもフレンドリーでいつも気にかけてくれるし、離れた日本の家族・友人には何でも話せるし、偶然出会った他国からの観光客とでさえ気持ちを共有できたりと、いつでもどこでも誰とでも、人の温かさを感じることができます。ここでは人と人の距離がとても近く、支えあってみんなで生きているのです。
2.《折り紙》要請の経緯
協力隊員は各々の日常活動に加え、有志によるイベント開催など、一人では困難な活動も協力して行っています。昨年は広島県出身の隊員を中心に『ヒロシマ・ナガサキ原爆展』及び『平和展』を企画しました。そこで、戦争が記憶に新しいウガンダの人々と共に世界平和について考えると同時に、日本文化紹介を含め参加者で千羽鶴を折り日本(広島平和記念資料館)へ届けようと考えたのです。私も日本人としてだけでなく三重県民としても関わりたいと思い、千羽鶴といえば桑名!ということで《折り紙》寄付のお願いをすることにしました。昨年9月、三重県(特に四日市南高等学校)の皆様のご協力のもと、約2,000枚の折り紙を回収していただくことができました。日本からの温かいお気持ち、本当にありがとうございました。
3.展示会の報告
これまでに学校3ヶ所(昨年10月 中高等学校、今年4月 ホテル・観光業訓練校、6月 小学校)で展示会を開催しました。戦争や原爆に関してポスター約40枚を展示、DVDを上映し、隊員だけでなく事前に学習してもらった各学校の先生にも解説をしてもらいました。先生や生徒だけでなく、保護者や会場付近の住民も興味を持って足を運んでくださり、至る所で質問や意見が飛び交っていました。展示を見てもらった後、折り鶴作成に移り、はじめに少し時間をいただいて簡単なスピーチをしました。
佐々木禎子さんと千羽鶴のストーリーを紹介し、日本では平和や健康への願いを込めて折られていることを話しました。また、「使用する折り紙は私の故郷からのプレゼント。ウガンダからの気持ちをこの折り紙にプラスして、広島へ世界へと、平和への願いを繋げよう」と伝えました。参加者は積極的に折り紙を手に取り、細かい作業に苦戦しながらも自分の気持ちを込めた折り鶴を完成させようと一生懸命でした。ウガンダの国鳥がカンムリヅルなので、折り鶴が日本で平和の象徴だと知って喜んで取り組んでくれたり、難しいと声を上げつつも何度も挑戦してくれたりする参加者を見て、大変嬉しく思いました。折り鶴は全て合わせて約1,000羽になりました。(写真は6月の小学校開催時のもの)
4.最後に
展示会では、日本人もウガンダ人も全員が世界に目を向け意見し合えた、素晴らしい機会となりました。センシティヴな内容であったにも関わらずこのように開催できたのは、人と人の距離が近く、オープンに話すことのできる環境があったからこそだと思います。『あなたにとっての平和とは?』に対してそれぞれ異なる意見を持つ参加者が作った色とりどりの折り鶴、けれど世界平和を願うその気持ちは同じで、それを一つに束ねることができた、そう思うと感動でいっぱいになりました。今回、皆様からいただいた折り紙は、平和への願いを繋ぐツールとなったのではないでしょうか。今後も継続的に開催予定の展示会で同様に使わせていただくつもりです。
寄付していただいた方はもちろん、それをサポートしてくださった三重県の皆様、全ての方々に感謝しています。中には、ただ使わない折り紙が余っていたから、という方もいらっしゃるかもしれません。むしろ、折り紙回収の段階で世界平和を意識された方がいらっしゃったでしょうか。実際、私自身それほど深く考えていなかったと反省するところがあります。しかし、何気ないその気持ちがこのように世界まで繋がっていっているのだと、誰もが世界を担っている一員なのだと、ここは遠く離れた地かもしれないけれど意外と近いのだと、感じてもらえたら幸いです。私は半年後に帰国しますが、それまでより多くの人と気持ちを通わせられたらいいなと思っています。本当にありがとうございました。