26年5月普及現地情報
温州みかんの生育について
4月の気温が平年に比べやや低めに推移したため、温州みかんの満開期は海岸部で5月5日頃、山間部で5月9日頃となり、平年より3~5日程度遅れました。着花量は極早生は平年並、早生では園地によりバラツキが多くなっていますが、昨年よりやや多い傾向。昨年夏の干ばつの影響で、新梢伸長量が少ない樹が散見されます。中晩柑類の着花量は、平年並からやや多い傾向です。病害虫の発生状況は、カメムシ類が昨年多発した影響で、越冬成虫が多く、開花時期に園地で多く見られました。
また、本年度も摘果作業省力化と隔年結果の是正対策として、摘果剤の散布を推進しています。4月28日、5月23日には普及センター、JA三重南紀営農企画指導課、JA全農みえ熊野駐在、農業研究所紀南果樹研究室及び各市町担当者で構成する営農連絡協議会を開催し、今年の開花状況、摘果剤の使用方法に関する検討等を行いました。今後も月1回以上のペースで開催し、お互いに情報を提供して共有することで、技術者間の営農技術情報の並列化を目指します。
JAでは5月15日に部分全摘果の講習会、6月2日には間引き摘果の講習会を各地区で開催し、多数の生産者が参加しました。摘果作業の省力化に対する関心の高さがうかがえました。
昨年度は、気象的要因もあり高品質果実生産が出来ましたが、本年度も高品質果実の連年安定生産に向けて、生産者と関係機関で連携し、産地全体での取り組みを進めていきます。
摘果剤講習会の様子 摘果剤講習会における実演散布
紀州地域での新品種「三重23号(商標:結びの神)」の取組
当普及センター管内では、今年も県育成新品種「三重23号」の栽培が取り組まれています。今年は昨年より2生産グループ増え、4地域8生産者3.7haになりました。昨年までの全農を経由した基幹流通に加え、今年度より地域の活性化に寄与するために地域の独自性を活かした地域販売に取り組んでいます。御浜町尾呂志地区では「結びの神」の販売を通じて、米どころ“尾呂志”をPRし、水田を守っていくことで地域の活性化を図っているところです。紀宝町浅里地区では紀州地域では初めてのぐるみ型集落営農組織をめざし、集落全体で取り組む獣害対策や耕作放棄地対策と連動して「三重23号」の栽培に取り組んでいます。普及センターとしては、栽培だけではなく、「コトづくり(ストーリーづくり)」の支援、また独自の販路開拓の支援を通じて、これらの地域の活性化へ結び付けていけるよう活動を行っています。
なお、新たな三重の米「結びの神」のPR活動の一環として、「丸山千枚田」にて5月18日に開催されました「田植えの集い」にあわせ、知事オーナー田に「三重23号」を田植えしました。当日は、石垣副知事、農林水産部長が田植えを行い、地元メディアの取材を受けました。普及センターとしては、今後も地道なPR活動を行うことで「結びの神」を栽培する生産者の意欲向上につなげるとともに、消費者への普及を図る支援を行っていきたいと考えています。
尾呂志での共同移植作業 浅里では獣害対策の後、 丸山千枚田でのPR
耕作放棄地25aに三重23号を栽培
尾呂志地区が紀南ツアーデザインセンターで地域PR
御浜町尾呂志地区では平成23年度に地域活性化プランを策定し、「尾呂志地区活性化プラン推進委員会」が中心となって、プランに基づいた活動を推進しています。特に尾呂志の情報を発信することで、地域への注目度を高め、持続的な経済活動につながる取り組みに力を入れています。
さて、本年は熊野古道世界遺産登録10周年や紀勢自動車道の全線開通があり、より多くの人々が熊野地域を訪れています。そこで紀南地域活性化局とも連携して、熊野の旅の拠点ともなっている「紀南ツアーデザインセンター」において「尾呂志を感じる2週間」と題して5月26日から6月8日まで特別展を行いました。産直施設の「草餅」や「野菜」、尾呂志地区独自の「紅茶」、県単「農業環境指標等活用事業」により環境にやさしい米づくりを評価し指標化した「夢アグリ米」、総務省「過疎地域自立促進特別事業」により整備した加工施設で作った「漬物」など、尾呂志を代表する農産物のPRと販売を行いました。また、5月31日には地元の飯炊き名人により、かまどと羽釜での飯炊き体験や熊野地域独自の茶粥づくり体験を行い、米どころ“尾呂志”のPRを行いました。
今後、普及センターは既存の特産品のグレードアップに加え、新たな特産品開発を支援し、他地域へ「尾呂志」のPRを行えるよう支援を行っていきます。
館内の展示の様子 羽釜での飯炊き体験
尾呂志「夢」アグリと熊野精工株式会社による地域活性化
御浜町尾呂志地区の担い手グループ「尾呂志『夢』アグリ」と熊野市有馬町にて精密機械を製作する「熊野精工株式会社」が協働で地域の活性化に取り組むことになりました。
今回の取り組みは、地元ブランド米のPRを行いたい「尾呂志『夢』アグリ」と地域との絆を深めたい「熊野精工株式会社」とのニーズが一致したことから、地域連携部の「三重のふるさと応援カンパニー推進事業」を利用し、取り組むこととなりました。
5月10日には、熊野精工の社員12名と「尾呂志『夢』アグリ」会員、地元住民ら合わせて約30名が参加し、県が開発した酒米「神の穂」を手植えしました。
収穫量は20俵を見込んでおり、伊賀市の蔵元で醸造し、一部は尾呂志のブランド酒として販売し、地域興しの目玉として活用する予定です。
今後は、両者が協力して水田の多様性を調べる調査や稲刈り、しめ縄作り体験などを行い、来年3月には今回の取り組みにより完成した新酒の完成試飲会が開催される予定となっています。
集合写真 田植えの様子