各講座では、『ガイドライン』の概要説明を行いました。その際には、ハンセン病患者家族訴訟の終結、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」の施行、「三重県犯罪被害者等支援条例」の施行等、『ガイドライン』発行後の様々な人権保障の動向についても関連付けてお話しました。
その後、各講座1つずつテーマを設定し、グループワークを交えながら、理解を深めるための研修を行いました。
8月1日(木)
「部落問題を解決するための教育」に係わって、部落問題学習を進める中で子どもや保護者等から出てくる様々な疑問をどうとらえ、どのように対応するかをテーマに研修を行いました。
取り上げた疑問は「部落差別って、今、どんな差別があるの?」「そっとしておけば、差別はなくなるんじゃない?」などです。それぞれについて、当事者の声や三重県民対象の意識調査のデータ等を紹介しながら、「自分ならどう答えるか」について考え合いました。
【参加者アンケートより】
・自分が今まで「聞かれたらどうしよう」と困っていたことを教えていただきました。これまでは「自分がいか
に伝えるか」に意識がいっていましたが、大事なことは「子ども一人ひとりの困っていることについて、みん
なで考えよう」とする仲間づくりをすることだと感じました。それが人権学習の土台になるのだと思います。
・部落問題について、もっと学習しないといけないと痛感しました。実際に子どもや保護者等と接する中で、自
分の言葉で、自分の話をして、関わっていけるようになりたいと思いました。
・一つの話題について少人数で話ができたのがとてもよかったです。自分の考えや経験を伝えたり、他の方の体
験や現状を教えていただいたりすることは普段あまりないので、とても新鮮でした。こうやって話せる機会が
自分の職場でもあったらいいのにと思います。できれば校内研修で、今回の話題を取り上げて話し合いをした
いと思いました。
8月8日(木)
『ガイドライン』の記述について、具体的な例示を交えて紹介した後、それぞれに「自分と人権問題との係わり」を振り返るグループワークを行いました。その後、「自分と人権問題との係わり」をみつめるための手掛かりとして、「特権」という概念をテーマに、研修を深めました。「特権」というのは簡単に言うと「生まれながらの属性によって、努力せずに得た有利さ」です。「特権」という視点を持つことで、例えば、「いわゆる『健常者』である」「日本人である」「男性である」といった属性のおかげで、その属性を持っていない人が日々直面する困難を免れていることに気づくことができるようになります。また、無意識・無自覚のうちに人を傷つけてしまう「マイクロアグレッション」という概念についても説明しました。
【参加者アンケートより】
・「特権」についての考え方はとても納得できるものでした。自分には多種多様な「特権」があり、でも日頃意
識に上ることは少ないことが認識できました。勤務校には「特権」を持っていない生徒が多くいます。その生
きづらさをとらえることが大切だと思いました。
・関わっている生徒の顔を思い浮かべながら研修を受けることができました。また、「加差別」「被差別」につ
いての自分の経験を振り返ることで、深いところにある自分の意識に気づかされました。
・若い先生から「人権教育って必要ですか?」と聞かれ、自分なりに説明したものの、うまく伝えられなかった
経験があります。この講座で久しぶりに自分のことやこれまでの経験をじっくり振り返ったり交流したりする
ことを通して、「こういう機会を持つことが『なぜ人権教育が必要か?』に答えることになる」と感じまし
た。校内研修で同じようなことができたらと思います。
8月9日(金)
「人権教育を推進するうえで大切にしたいことQ&A」より、「Q10 『人権教育は教育活動全体を通じて行うもの』と言われますが、どういうことでしょうか?」を取り上げ、学校教育のあらゆる場面で子ども一人ひとりの人権が大切にされる環境づくりをテーマに考え合いました。
まず、自分が日頃、子どもと会話したり、子どもに指導したりするときの関わり方を、チェックシートをもとに振り返った後、チェックしてみて気づいたこと等を交流しました。その後、いじめの発生に係わる教職員の影響について、様々なデータを紹介しながら、研修を行いました。
【参加者アンケートより】
・子どもたちが困ったとき、何かがわからないときに、そのことを周りに伝えられるような学級にしていかなけ
ればならないと改めて感じました。そのためには、まず自分の言動を振り返らなければならないと思います。
今日の講座では、学級での日頃の自分の姿を振り返ることができました。
・「教職員が子どもに与える影響」についてのチェックシートは、教育実習生や新規採用の先生に渡したいと思
いました。自分は気づかずに失敗してきたことが多く含まれているので、「大事にしたいこと、気づいておく
といいこと」として伝えたいです。
・この講座で、今までの自分の取組を振り返ることができました。また「9月からやろう」と思わせてくれまし
た。いつも教師の視点から考えてしまいがちですが、子どもの視点や双方の視点など、多角的に考えていこう
と思いました。