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平成30年09月20日

2018(平成30)年度 人権学習指導資料等活用のための講座 報告

 三重県教育委員会では、県発行の人権学習教材及び人権学習指導資料の活用のための講座を実施しています。

 ここでは、その概要をお知らせします。

1 人権学習教材「わたし かがやく」活用のための講座

右寄せ

講座の様子

   本講座では、障がい者の人権をテーマに、教材「ここであたりまえに暮らしたい」について研修を行いました。この教材は、重い障がいがあり、生活全体にわたってヘルパーやボランティアの介助を得ながら一人暮らしをしている松田愼二さんのことを取り上げたものです。教材に沿って、「自立とはどういうことか」「障がいのある人とない人との間にある心のバリアはどうしたら取り除いていけるのか」等について、グループで考え合っていただきました。
 また、「障害者権利条約」「障害者差別解消法」、そして、三重県が2018(平成30)年度に制定した「障がいの有無にかかわらず誰もが共に暮らしやすい三重県づくり条例」等のベースにある、障がいの「社会モデル」の考え方についての学習展開例も提示しました。
 
【参加者アンケートより】
・昨年度、「ここであたりまえに暮らしたい」を使って授業をしました。そのときにモヤモヤしていた部分が、      
 今回の研修でスッキリしました。「授業でもっとこうすればよかった」と感じることができました。
・グループの方の話を聞かせてもらいながら、立ち止まって自分のことを見つめ直すことができました。「自 
 立」についても、わかりやすく自分の中におちた気がします。
・「心のバリア」はなかなかなくならないのかな、と思います。しかし「心のバリア」があることを認めて、改
 善して、壁を壊していこうという気持ちを持ち続け、行動することが大切だと感じました。生徒たちとも話す
 機会を設けようと思います。

2 人権学習指導資料「気づく つながる つくりだす」「性的マイノリティの人権」活用のための講座

 

右寄せ

講座の様子

   本講座では、二つの指導資料を取り上げて研修を実施しました。
「気づく つながる つくりだす」では、部落問題をテーマとして取り上げました。まず「部落差別解消推進法」について内容を説明し、その後、条文の「現在もなお部落差別が存在する」という文言に焦点をあて、「どこに、どのようなかたちで差別が存在するのか」について研修を行いました。意識調査結果等のデータで確認するとともに、日常の様々な場面に潜んでいる差別の存在に気づいた経験をグループで出し合うことで、認識を深め合っていただきました。学習展開例としては、様々なかたちで差別が存在することに気づくことをねらいとした「基本的人権と私たちの生活」を取り扱いました。グループワークを交えながら、設問の意図や指導上の留意点について説明しました。
 「性的マイノリティの人権」では、三重県男女共同参画センターが2017(平成29)年度に実施したアンケート調査結果から、「周囲の無知・無理解のために、性的マイノリティ当事者は『学校に安心できる場所がない』と感じている割合が高い」といった課題が見て取れること等を説明しました。アンケート調査結果をふまえ、グループで各学校での取組状況等について出し合っていただきました。その後、学習展開例全体について、アンケート結果等から見える課題と対応させながら説明しました。
 
【参加者アンケートより】
◎「気づく つながる つくりだす」
・「部落差別解消推進法」について、噛み砕いて説明していただき、より理解を深めることができました。
・具体的な事例を通じて、差別の様々なあり方を知ることができました。他の方の差別の存在に気づいた経験を 
 聞かせてもらえたこともよかったです。
・自分のクラスの生徒を思い浮かべながら聞くことができ、2学期からのモチベーションにつながりました。
◎「性的マイノリティの人権」
・昨年度から授業でも取り上げるようになり、「知ること・知らせること」の大切さを実感しました。このような
 研修会に参加すると、まだまだ知らないことがあることに気づきます。子どもたちが安心して過ごせるよう、
 自分自身が学んでいきたいです。
・他の校種での取組を聞くことができ、参考になりました。自分の学級にも当事者がいると考え、みんなが気持
 ちよく過ごせるようにしていきたいです。
・性同一性障がいの生徒にうまく対応できなかった経験があり、何か具体的に学びたいと思い、参加しました。
 日常のちょっとしたことから見直していくことが大切だと思いました。

3 人権学習指導資料(小学校高学年)「みんなのひろば」活用のための講座

右寄せ

講座の様子

   本講座では、外国人の人権をテーマとして取り上げました。
 まず、三重県は外国人住民の割合が全国で4番目に多いことなどを確認しました。
 次に、学習展開例「言葉の壁を乗り越えよう」について研修を行いました。「みんなできるかな?」ゲームを通して言葉が分からないことによる困り感や不安感に気づく力を育むことや、マンダラシートへの書き込みや話し合いを通して「私たちができること」の具体的な行動について考えることなどについて、体験していただきました。
 そして、学習展開例「知ろう!考えよう!朝鮮半島と私たち」から「ありのままで生きていきたい」を取り上げ、学習を実際に体験していただきながら設問の意図や指導上の留意点について説明しました。
 さらに「ヘイトスピーチ解消法」が成立するまでの経過やその後の動きについて、その成立に係わった人々の思いも提示しながら、人権を守るために行動することの重要性を確認しました。 
 
【参加者アンケートより】
・ゲームを通して自分が実際に体験できたことで、次に子どもを支援するときに心から寄り添えると思いまし
 た。校内でもやってみたいと思います。今までわかっているようでわかっていなかったことに気づけました。
・「みんなのひろば」にあるワークシートを実際にしていただいたので、とても分かりやすくてよかったです。
 現在、2年生を担任していますが、マンダラシートは何にでも使えそうだと思いました。李さんのお話を通し
 て、「歴史を学ぶこと」や「自己肯定感を得ること」はとても大切だと思いました。
・ヘイトスピーチの現状を映像やそれに対する当事者の思いを通じて知り、「自分ならどう思うか、どうする 
 か」を考えることができました。グループワークで先生方の意見を聞かせてもらうことで、様々な考え方に触
 れることができました。今後に活かしていきたいと思います。

4 人権学習指導資料(小学校低中学年)「みんなのひろば」活用のための講座

右寄せ

講座の様子

   講座の前半は、学習展開例「自分の気もち みんなの気もち」を取り上げ、そこで提示している活動を実際に体験していただきました。この展開例は「自分の感情を言葉で表現する力を養うこと」「人によって感じ方が違うことに気づくこと」をねらいとしたものです。また、これらの学習を子ども理解につなげることの大切さについて、実例を交えて説明するとともに、それぞれが関わってきた子どもの姿を出し合っていただきました。
 後半は、監修者の佐久間敦史さんに執筆していただいた「発刊に寄せて」をもとに研修を行いました。教職員が「教えたいこと」を直接的に教えるのではなく、子どもが自ら疑問や課題意識を持って考えていけるようにするための授業づくりの大切さについて説明するとともに、「よい発問」について、グループワークも交えて理解を深め合っていただきました。
 
【参加者アンケートより】
・「自分の気もち、みんなの気もち」を活かしてみたいと思いました。半分以上の児童が、自分の考えや意見に
 自信がなくて、発表が苦手です。この活動を通して、同じ顔のカードでもとらえ方が異なることに気づいた
 り、相手が選んだカードから気持ちを考えたりすることで、感じ方の違いに気づかせたいです。そして、違い
 を認め合えるようにしていきたいです。クラスで違いを認め合えるよう、2学期からも頑張りたいと思いま
 す。
・人権学習における「よい発問」とはどのようなものかを、校内でも考えを交流したいと思いました。知らず知
 らずのうちに、教師の価値観を押し付けた学習、意欲が持てないしんどい学習にしてしまっていることがある
 ので、授業を振り返りたいです。
・一人で考えていたら行き詰っていたことがたくさんありました。しかし、グループの先生方のおかげで、自分
 の気持ちや考えだけではない他の考え方の存在に気づきました。また、一緒に笑ったり「難しいね」「わから
 ない」と言ってくれたりしたことが、とてもうれしかったです。

5 いじめの問題を解決するための指導資料「ともに つくる あした」活用のための講座

右寄せ

講座の様子

   はじめに、アイスブレイクとして、リフレーミングを扱った学習展開例「『短所』を魅力に!?」を体験していただきました。
 次に、三重県のいじめの現状について、三重県の調査結果を基に共有しました。そして、学習展開例「いじめ防止条例から学ぼう」を、三重県いじめ防止条例に基づいてアレンジした展開例を提示しました。
 また、教職員研修プラン「仲間づくりの取組を進める」を取り扱いました。生活背景を知ることや「語る」「つづる」ことを通したいじめを許さない仲間づくりの取組についてグループワークをしていただきました。
 
【参加者アンケートより】
・短所と思っていたことは見方を変えると短所ではなくなるように、視点を変えてみる重要性に気づきました。
・「つづること」「語ること」はゴールでないという言葉が心に残りました。「つづること」を通して、子どもた
 ちの思いや声や暮らしをもっと見つめる作業をしたいと思いました。
・厳しい家庭環境にある生徒の生きづらさに気づくことの大切さを学びました。ただ、どんな状況にあっても、や
 るべきことはしなくてはならないし、やってはいけないことはしてはならないと思います。生徒の背景を理解し
 つつ、指導をしていくことが大切だと思います。

6 「人権教育ガイドライン」活用のための講座

右寄せ

講座の様子

   本講座では、2018(平成30)年3月に発行した「人権教育ガイドライン」について説明を行いました。
 前半は、主に個別的な人権問題に対する取組について、補足説明を加えたり、関連する資料を提供したりしながら、説明しました。また、その内容に関するグループワークをすることで、理解を深め合っていただきました。
 後半は、「人権教育を進めるうえで大切にしたいことQ&A」の中から、Q3「生活背景を知らなくても取組は進められると思うのですが、それでは不十分なのでしょうか」を取り上げ、事例を示しながら説明しました。また、子どもの「気になる」姿の背景にあるものや、学校だけでは見えてこなかった子どもの「よさ」を見いだした経験について、グループで出し合っていただきました。また、生活背景を知ることの大切さを考えるうえで参考となる動画「智の物語」を紹介しました。
 
【参加者アンケートより】
・「ガイドライン」の内容について知ることができました。夏休み中に「ガイドライン」をしっかり読んでみよ
 うと思いました。
・グループワークでは、他校種の先生方と交流・意見交換することで、発達段階の違う子どもの現状や実態を把握
 できてよかったです。今後は職員研修等で詳しく「ガイドライン」について知ってもらったり、人権・同和教育
 の必要性について伝えていったりしたいと思いました。
・職場では、人権教育についても他のことについても、人によってとらえ方が様々で、なかなか共通理解が図れ
 ず、担当として困っていました。また、自分のとらえが正しいのかどうかも不安に思っていました。この研修 
 に参加し、自分の考えを確認するとともに、いろいろな考えに出会うことができました。9月からの取組に活
 かしていきたいと思います。

7 人権学習指導資料等 活用実践報告

   本講座では、津東高等学校の芝野真由美さんと、松阪市立中川小学校の中井千晶さんより、人権学習指導資料を活用した取組について報告をしていただきました。ここではその一部を紹介します。
 

報告1
 芝野さんは1年生担任をしています。入学したばかりの子どもとの1・2学期の関わりについて、人権学習を中心に報告していただきました。
   1年生の1学期は、「新入生アンケート」の結果を活用して人権学習を行いました。この年度は、いじめに関わる経験やいじめに対する考え方に着目しました。具体的には「身のまわりでいじめを見たとき、見て見ぬふりをした」「被害者にも問題がある」という回答を課題として取り上げ、「ともに つくる あした」の「『理由』?

右寄せ

 

『責任』?」(P.27)、「あなたにできること」(P.59)という二つの学習展開例を活用し、授業を行いました。芝野さんは授業の最後に、「いじめられたとき一人で抱え込んでいた」という回答に触れ、「いじめだけでなく、しんどいことがあったときに、誰かに頼る大切さ」について、自身の経験も伝えつつ、訴えました。この授業の後しばらくして、何人かの子どもが、芝野さんに部活動の悩みなどを話すようになったといいます。
   2学期は人権講演会を中心に取組を進めました。講演会後、いじめに係わる自分の経験を講演内容に重ねて感想を書いた子どもがおり、芝野さんはその子どもと話をしました。次の授業で、その子どもを含めた何人かの感想を教材として、子どもたちが意見を出し合う活動を行いました。いじめに係わる経験を書いた子どもは、活発に話し合いに参加していたそうです。
 実践報告を受けて、参加者にもそれぞれの経験や考えをグループで出し合っていただきました。芝野さんもグループでの話し合いに参加し、3学期以降、これまで以上に子どもたちをよく見ていきたいと話してみえました。
 
【参加者アンケートより】
 
  • 一度の授業で完結するものではなく、1学期、2学期にわたっての学習であったからこそ生徒の人権意識が育っていったのだと思う。特に1学期に芝野先生が自分の体験を語ったことは、クラスづくりを進めるうえで大きな意味があったと感じた。
  • 高校の実践を知ることができるよい機会となった。「自分のことを語る」ということの価値についてグループでも話し合った。子どもたちとつながるために、教師が自分のことを話すことはとても大切。自分もそのことを大切に3学期を過ごしていきたい。
  • ワークシートの内容から学ぶことも多かったが、芝野先生の前向きな取組姿勢や、グループの先生方の感想から自分自身がクラス運営に今後活かしていきたいと思える情報がたくさん得られた。



報告2

右寄せ

 

 中井さんは、教職経験3年目で小学校4年生を担任しています。
 クラスの中には、周囲の人の顔色をうかがったり、自分の本音を隠したりしながら生活している子どもたちがいました。中井さんは、そういった子どもたちの背景にある生活を把握することに努めながら取組を進め、その中で「みんなのひろば(小学校低中学年)」にある「聞こう! 考えよう! わたしたちの問題 / 2 不安になるとき、どんなとき?」(P.51)を活用し、授業を行いました。
   活用にあたっては、子どもが自分の課題に向き合いやすくなるように、学習展開例をアレンジしました。一つは、中井さんが子どもの頃、自分の課題に向き合えずに苦しんだことやそれを乗り越えた体験を話す活動を取り入れたことです。もう一つは、不安になるときの場面設定(P.53)を、子どもの実態に合わせて加筆・修正を行ったことです。
   授業では、子どもたちは真剣に中井さんの体験を聞き、「まさか、先生にそんな気持ちがあったなんて」と驚いていたそうです。自分の「不安になるとき」を書くときも意欲的に取り組み、それまで書いたり話したりしたことのないような「家族のことや不安・悩み」を書く子どもが出てきたそうです。
   中井さんは、この取組の中で子どもや保護者と話をしたり、子どもと一緒に作文を書いたりすることにより、それまで見えていなかった子どもの不安や優しさ、我慢している姿などを知ることができたそうです。3学期には、こういった子どもたちの思いをもとに、子どもや保護者と話したり、お互いのことを出し合う授業を行ったりしたいと話していました。
   報告を受けて、参加者にも「生活背景が子どもに与える影響」などをテーマに、自分たちの経験や考えをグループで出し合っていただきました。
 
 【参加者アンケートより】
 
  • 教師が自分の思いや体験を語っていくことが、子どもの自己開示の助けになると思った。教職という仕事は、子どもと関わり合いながら自分自身も成長していくことのできる尊い仕事であり、長く続けていきたいと思うこともできた。
  • 「保護者や子どもとどのように関わると良いのか」について、改めて考えさられた。グループ協議の中で「保護者と話すからこそ信頼関係ができる」ということを教えてもらった。保護者との関わりを一歩踏み込むことで、子どものためにできることが増えることもわかった。
  • 「みんなのひろば」を今まであまり読んだことがなかったが、今日の講座が冊子に目を通すきっかけになった。「みんなのひろば」は、教室の状況に応じていろいろな使い方ができそうだと思った。すごく使いやすそうだったので「使ってみたい!」と思った。
  









 
 

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