三重県人権教育基本方針
〔1999年(平成11年)2月策定〕
〔2007年(平成19年)2月8日一部改正〕
〔2009年(平成21年)2月12日改定〕
〔2017年(平成29年)3月14日改定〕
〔2024年(令和06年)3月14日改定〕
内容
Ⅰ 基本的な考え方
Ⅱ 人権教育の目的
Ⅲ 個別的な人権問題に対する取組
Ⅳ 人権教育推進方策
人権感覚あふれる学校づくり
人権尊重の地域づくり
Ⅴ 教育関係者の取組
Ⅵ 附則
Ⅰ 基本的な考え方
国際連合では、1948年の世界人権宣言以降、全世界からあらゆる差別や人権侵害をなくすため人権に関する多くの条約等を採択し、人権が尊重される社会の実現に取り組んでいます。採択された条約等では人権教育を「知識の共有、技術の伝達、及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行う、教育、研修及び情報」と定義し、段階的に目標を定め、計画的に取組が進められています。このように国際社会では、「人権教育は人権が尊重される社会の実現へ本質的な貢献をなす」という共通認識が広く定着し、すべての人の人権を実現することをめざす持続可能な開発目標の達成にも主要な役割を果たすとされています。また、国においては、人権教育・啓発の重要性から、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」を定め、その施策の実施について、国や地方公共団体の責務としています。三重県では「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」で学校教育等を通じ人権教育を積極的に推進することを定めています。三重県教育委員会はこれまで、国内外の人権や人権教育に関する動向をふまえながら、1997(平成9)年に施行された「人権が尊重される三重をつくる条例」のもと「人権に関する問題への取組を推進し、不当な差別のない、人権が尊重される、明るく住みよい社会の実現を図る」ため、同和教育の理念や成果を重要な柱とする人権教育を推進してきました。
具体的には、「差別の現実から深く学ぶ」という原則のもとに、自分と重ねて人権問題をとらえることを大切にし、単なる心がけだけではなくそれらを解決し、社会を変えていく具体的行動につなぐことをめざしてきました。また、その取組にあたっては、偏見や差別によって一人ひとりが抱えさせられている課題や悩みから出発して、仲間づくりを進め、自分自身に誇りをもち、自分らしく生きることができるよう、学力保障や進路保障を柱として進めてきました。
人権教育の推進にあたっては、その基盤として、教育・学習の場そのものが人権尊重の精神に立った環境でなければなりません。そのためには、人権侵害を被っている人々の意見や思いを聴き、その視点に立って考えることが必要です。また、人権教育の重要な要素である教育関係者自身が多様な人々との出会いを通じて確かな人権感覚を身につけるとともに、子どもの権利を尊重し、その最善の利益が実現されるよう取り組むことが必要です。
さらに、家庭、幼稚園等・学校(以下「学校」という。)、地域など、それぞれの場で多様な機会をとらえて人権教育を実施するとともに、学校、社会教育機関、教育委員会、社会教育関係団体、民間団体、公益法人などの各実施主体がその担うべき役割をふまえ、相互に有機的な連携・協力関係を一層強化し、総合的かつ効果的に人権教育を推進することが重要です。県民一人ひとり、NPO、地域団体、市町、県などの多様な主体が、協働して公の取組を進めていくという考え方に立ち、互いの取組に学びながら、個々の取組を着実に進め、充実させていくことが求められています。
三重県教育委員会は、教育を取り巻く社会情勢の変化を的確にとらえ、これまでの取組を継承・発展させていきます。そして、社会的に不利な立場にある人の人権は侵害されやすいという現実をふまえ、常に被差別の視点、人権侵害を被っている人々の視点に立ち、さまざまな人権問題を解決するため、日本国憲法や国際条約、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」および「人権教育・啓発に関する基本計画」、「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」その他の差別を解消するための法律や条例などに基づき、県全体の人権教育を各主体と協働しながら積極的に推進していきます。
Ⅱ 人権教育の目的
上記の目的を達成するため、以下の3点を目標とします。
一人ひとりが、自分に誇りをもち、自分らしく生きようとする態度を身につける。
Ⅲ 個別的な人権問題に対する取組
主な人権問題としては、部落問題、障がい者、外国人、子ども、女性の人権に係る問題のほか、高齢者、患者(HIV感染者・エイズ患者、ハンセン病元患者、難病患者等)、犯罪被害者、アイヌの人々、刑を終えた人・保護観察中の人等の人権に係る問題、性的指向・性自認、貧困等、ひきこもりに係る人権課題、インターネットによる人権侵害、災害と人権、北朝鮮当局による拉致問題等
などがあります。
社会の動向等により新たに生じる人権問題についても、状況に応じ必要な教育に取り組みます。
Ⅳ 人権教育推進方策
人権感覚あふれる学校づくり
「人権感覚あふれる学校づくり」とは、幼児・児童・生徒(以下「子ども」という。)の望ましい人間関係を形成し、人権尊重の意識や実践行動ができる力を育むため、教科等指導、生徒指導、学校経営、その他さまざまな取組など、教育活動全体を通じて一人ひとりの存在や思いが大切にされる学校をつくることです。そのための観点として以下の取組を位置づけ、市町教育委員会等、多様な主体と協働しながら取り組みます。
1 教育的に不利な環境のもとにある子どもの学力を向上させることで、すべての子どもの学力・進路
を保障する取組の充実を図り、子どもの現在や将来が経済的・社会的な事情に左右されないよう学
校づくり・環境づくりを進めます。
(1)子どもを権利の主体として尊重し、学校の多様性、包摂性を高め、意見表明や参加する権利などの子どもの権利や、いのち
とくらしを守る基盤を保障する取組を進めます。
(2)子どもが、偏見や差別が存在する社会に生きる一人であることを自覚し、自分自身の生活や社会の状況を変えようとする行
動力や未来を切り拓く実践力を身につけられるよう、学習活動を創造します。
2 子どもや家庭・地域社会の実態を的確かつ総合的にとらえ、差別を解消するうえでの課題を明らか
にします。
(1)身のまわりにある差別やいじめなど人権に関わる問題の解決に向けて課題を明らかにします。
(2)子どもの生活の背景にある家庭や地域社会に存在する差別の実態を明らかにします。
3 子どもを主体とする人権教育の充実に努めるとともに、地域ぐるみの推進体制のもと、総合的・
系統的に人権教育を推進します。
(1)学校教育目標の中に、人権教育の目標を明確に位置づけます。
(2)解決すべき課題や指導のねらいを明確にした全体計画を立て、発達段階をふまえて系統的・日常的に取組を進めます。
(3)家庭、地域、関係する学校および関係機関と密接な連携を図り、地域ぐるみの体制で人権教育を推進します。
人権尊重の地域づくり
「人権尊重の地域づくり」とは、子どもが生活の基盤を置く家庭や中学校区程度の範囲の地域において、学校が行う人権教育に係るさまざまな取組を肯定的に受容するような家庭や地域の基盤をつくり、子どもと保護者、地域住民等が一緒になって活動に当たることを通じ、これらの人々の間に人権尊重の意識を広めることです。
三重県教育委員会は、そのための推進体制づくりや学習活動づくり等の観点を以下のように位置づけ、市町教育委員会等、多様な主体と協働しながら取り組みます。
1 市町と協働し、行政と地域社会が一体となった人権教育推進体制を充実し、県内全域に取組の活性
化を図ります。
(1)市町において、多様な主体による人権教育推進体制のもと、協働して取組を推進します。
(2)人権教育推進体制を構築する関係者の人権意識や実践力の向上および関係者の拡大に努めます。
(3)多様な主体と連携を深め、効果的な人権教育のための情報提供に努めます。
2 地域社会の実態をとらえ、課題を明確にし、内容や形態に工夫をこらした学習活動を多様な主体と
協働し推進します。
(1)市町と協働し、地域社会の実態を的確にとらえ、課題を明らかにします。
(2)地域社会における課題を克服するため、人権教育推進体制を構築する関係者との協働による計画的・系統的な学習活動の推
進を支援します。
3 さまざまな学習の場における人権教育を積極的に推進します。
(1)市町と協働し、地域住民の自発的な学習活動意欲を喚起することで、自主的・組織的な学習活動を促進します。
(2)市町の独自性を尊重しながら、地域における人権教育の拠点として、教育集会所・公民館・隣保館等がそれぞれの役割を果
たせるよう協働し推進します。
Ⅴ 教育関係者の取組
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さまざまな人権問題が現在の社会の中に厳存しているという事実認識に立ち、その現状を的確にとらえます。
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人権問題は、差別によって基本的人権が侵害されているところに本質があるという認識に立ちます。
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人権問題は、一人ひとりが自己に関わる課題として自覚していくことをとおして解決していくものであるという認識に立ちます。
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社会に存在するさまざまな意識、慣習や制度の中に、差別を温存し助長しているものがあるという認識に立ちます。
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人権に関する自らの意識を見つめ直し、職場の中で互いを磨き合うことにより確かな人権感覚を身につけ、教育実践力を高める研修に努めます。
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被差別の人々の生き方に学び、継承してきた文化について理解します。
- 人権問題の解決のために取り組まれてきた実践や成果に学びます。
Ⅵ 附則
2 本基本方針に基づく取組の参考となる資料となる資料を作成します。