差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例
令和4年5月19日 三重県条例第25号
全ての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等であり、いかなる事由による不当な差別も受けることなく、個人として尊重され、基本的人権の享有が保障されなければならない。この基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、侵すことのできない永久の権利である。こうした世界人権宣言、人権に関する諸条約及び日本国憲法の理念は、人類普遍の原理である。
このような理念の下、人権が尊重される社会の実現に向けて世界的に不断の努力が続けられている。地方公共団体における人権尊重に関する先駆的な取組も踏まえ、近年、我が国においては、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」及び「部落差別の解消の推進に関する法律」が制定されるなど、不当な差別の解消等を図るための人権尊重に関する法整備が進められつつある。
三重県においては、不当な差別をはじめとする人権問題の解消に向けて取り組んできた先人たちの努力により、県民の間において人権を大切にする意識が醸成されてきた。こうした中、三重県議会では平成二年に全国に先駆けて人権県宣言を決議し、県においても人権が尊重される社会の実現に関する施策に取り組んできた。
しかしながら、現在もなお、不当な差別をはじめとする人権問題が存在している。
これらの人権問題については、人権侵害行為を受けた者等にその解決の責任がないことは当然であり、人権侵害行為を行った者等がその責任を負わなければならない。また、これらの人権問題の多くは、社会構造の中で生じており、社会として解決していくことが必要である。私たち一人一人がその当事者であるとの認識の下、自他の人権を尊重し、不当な差別をはじめとする人権問題の解消に向けて取り組んでいかなければならない。
ここに、私たちは、世界人権宣言、人権に関する諸条約及び日本国憲法の理念の下、人権県宣言の趣旨にのっとり、社会全体の共通認識としてあらゆる不当な差別をはじめとする人権侵害行為を許さないと改めて宣言するとともに、不当な差別その他の人権問題のない、人権が尊重される社会を実現することを決意し、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、不当な差別その他の人権問題の解消をはじめとする人権尊重に関し、基本理念を定め、及
び県の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、不当な差別その他の
人権問題の解消を推進し、もって不当な差別その他の人権問題のない、人権が尊重される社会の実現を図るこ
とを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 人種等の属性 人種、皮膚の色、国籍、民族、言語、宗教、政治的意見その他の意見、年齢、性別、性的指
向、性自認、障がい、感染症等の疾病、職業、社会的身分、被差別部落の出身であることその他の属性をい
う。
二 不当な差別 人種等の属性を理由とする不当な区別、排除又は制限であって、あらゆる分野において、権利
利益を認識し、享有し、又は行使することを妨げ、又は害する目的又は効果を有するものをいう。
三 人権侵害行為 不当な差別、いじめ、虐待、プライバシーの侵害、誹謗中傷その他の他人の権利利益を侵害
する行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)をいう。
四 人権問題 人権侵害行為その他の人権に関する問題をいう。
(基本理念)
第三条 不当な差別その他の人権問題を解消するための取組その他の人権尊重に関する施策(以下「人権施策」
という。)及び県民、事業者等が行う人権尊重に関する活動は、次に掲げる事項を基本理念として推進されな
ければならない。
一 社会のあらゆる分野において人権が尊重されること。
二 対話を通じて不当な差別その他の人権問題の解消を図ることが重要であること。
三 不当な差別その他の人権問題の解消に当たって障壁となるような社会における制度、慣行、観念等の改善
を図ること。
四 人権侵害行為の意図の有無にかかわらず、その解消を図ること。
五 人権侵害行為を行った者等がその責任を自覚し、及び人権侵害行為を受けた者等の心情等を理解すること
を社会として促進すること。
六 人権侵害行為を受けた者等がその困難を乗り越えることができるよう社会として支えていくこと。
七 不当な差別その他の人権問題の解消を図ることにより、多様性が尊重され、誰一人取り残されることのな
い共生社会の実現に寄与すること。
第四条 何人も、不当な差別をはじめとする人権侵害行為をしてはならない。
2 何人も、共通の人種等の属性を有する不特定多数の者に対して当該人種等の属性を理由として人権侵害行為
をすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該人種等の属性を有することを容易に識
別することを可能とする情報を公然と摘示する行為をしてはならない。
(県の責務)
第五条 県は、前二条に定める基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、県行政のあらゆる分野
において人権尊重の視点に立って取り組むとともに、不当な差別その他の人権問題を解消するための取組をは
じめとする人権施策を総合的、積極的かつ計画的に推進するものとする。
2 県は、人権施策を推進するに当たっては、関係部局等相互の緊密な連携を図るとともに、国、関係機関、関
係団体その他の関係者と連携協力するものとする。
3 県は、県が設置する公の施設(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十四条第一項に規定す
る公の施設をいう。)における人権侵害行為の防止に努めるものとする。
(県民の責務)
第六条 県民は、基本理念にのっとり、自ら人権意識の高揚に努めるとともに、相互に人権を尊重しなければな
らない。
2 県民は、基本理念にのっとり、県が実施する人権施策に協力するものとする。
3 県民は、基本理念にのっとり、不当な差別その他の人権問題に対して傍観することなく、これらの解消に向
けてそれぞれの立場において主体的に取り組むよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第七条 事業者は、基本理念にのっとり、自ら人権意識の高揚に努めるとともに、従業員その他の関係者の人権
を尊重しなければならない。
2 事業者は、基本理念にのっとり、従業員の人権意識の高揚を図るなど、その事業活動において、人権尊重の
視点に立って取り組むとともに、県が実施する人権施策に協力するものとする。
3 事業者は、基本理念にのっとり、不当な差別その他の人権問題に対して傍観することなく、これらの解消に
向けてそれぞれの立場において主体的に取り組むよう努めるものとする。
(特定電気通信役務提供者の責務)
第八条 特定電気通信役務提供者(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関す
る法律(平成十三年法律第百三十七号)第二条第三号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。次項におい
て同じ。)は、基本理念にのっとり、インターネットを通じて行われる人権侵害行為の解消のために必要な役
割を果たすよう努めるものとする。
2 特定電気通信役務提供者は、インターネット上において、その用いる特定電気通信設備(特定電気通信役務
提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第二条第二号に規定する特定電気通信設備を
いう。以下この項において同じ。)の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるも
のに限る。)に情報が記録され、又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不
特定の者に送信されるものに限る。)に情報が入力されることによって人権侵害行為が行われていることを知
った場合であって、当該人権侵害行為に係る情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技
術的に可能なときは、当該措置を講ずるものとする。
(三重県議会の議員、知事その他の県の公務員の責務)
第九条 三重県議会の議員、知事その他の県の公務員は、基本理念にのっとり、高い人権意識を持ち、この条例
の目的を達成するため、率先して積極的な役割を果たすものとする。
(県と市町との協働)
第十条 県は、市町と協働して人権施策を実施するとともに、市町に対し、県と協働して不当な差別その他の人
権問題のない、人権が尊重される社会の実現に努めること及び県が実施する人権施策に協力することを求める
ものとする。
2 県は、市町と不当な差別その他の人権問題に関する相談の事例等の情報の共有を図るとともに、市町が実施
する人権施策について必要な助言その他の支援を行うものとする。
第二章 人権施策基本方針
第十一条 知事は、人権施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、人権施策の基本となる方針(以下「人権施
策基本方針」という。)を定めるものとする。
2 人権施策基本方針は、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 不当な差別その他の人権問題の解消をはじめとする人権尊重の基本理念
二 人権教育及び人権啓発に関すること。
三 不当な差別その他の人権問題を解消するための体制に関すること。
四 不当な差別その他の人権問題に係る分野ごとの施策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、人権施策を推進するために必要な事項
3 知事は、人権施策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、三重県人権施策審議会の意見を聴き、議会
の議決を経なければならない。
4 前項の規定は、人権施策基本方針の変更について準用する。
5 知事は、毎年一回、人権施策基本方針に基づく人権施策の実施状況について報告書を作成し、議会に報告す
るとともに、これを公表しなければならない。
第三章 不当な差別その他の人権問題を解消するための体制の整備
第一節 相談体制
第十二条 県は、不当な差別その他の人権侵害行為を受けた者、その家族その他の者からの人権侵害行為その他
の人権問題に関する相談に応じなければならない。
2 県は、前項の相談(以下この章において単に「相談」という。)があったときは、次に掲げる業務を行うも
のとする。
一 市町、関係機関等と必要に応じて連携して、助言、調査、関係者間の調整その他の必要な対応を行うこ
と。
二 必要に応じ、関係機関への通告、通報その他の通知を行うこと。
3 相談に応ずる者は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
4 県は、第二項の業務を円滑かつ効果的に行うために必要な人員を確保するとともに、相談に応ずる者に対
し、同項の業務の遂行に必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとす
る。
第二節 不当な差別に係る紛争の解決を図るための体制
(助言、説示及びあっせんの申立て)
第十三条 不当な差別を受けた者(属性情報収集等の対象となった者を含む。第三項において同じ。)、その家
族その他の関係者は、不当な差別(属性情報収集等を含む。第十五条において同じ。)に係る紛争(以下「差
別事案」という。)に関し、相談を経てもその解決が期待できないと認められるときは、知事に対し、当該差
別事案を解決するために必要な助言、説示又はあっせんを行うべき旨の申立てをすることができる。
2 前項の「属性情報収集等」とは、正当な理由なく、特定の者が有する人種等の属性に関する情報であって、
その者に対する不当な差別を助長し、又は誘発するおそれがあるものの収集を行い、依頼し、又は受託する行
為をいう。
3 不当な差別を受けた者の家族その他の関係者は、不当な差別を受けた者の意思に反して第一項の申立てをす
ることができない。
4 第一項の申立ては、当該申立てに係る差別事案が次のいずれかに該当するときは、することができない。
一 裁判所による判決、公的な仲裁機関又は調停機関による裁決等により確定した権利関係に関するものであ
ること。
二 裁判所又は公的な仲裁機関若しくは調停機関において係争中のものであること。
三 法令(民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)を除く。)に基づくあっせん、調停、和解の仲介
又は紛争の解決の援助の申請等をすることができる紛争に関するものであること。
四 行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)その他の法令に基づく不服申立て又は苦情の申出をする
ことができる行政庁の処分その他公権力の行使又は職員の職務執行に関するものであること。
五 障がいの有無にかかわらず誰もが共に暮らしやすい三重県づくり条例(平成三十年三重県条例第六十九
号)第十八条第一項の申立てをすることができるものであること。
六 行為の日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から三年を経過したものであること。
七 現に犯罪の捜査の対象となっているものであること。
八 差別事案に係る相手方(以下この節において単に「相手方」という。)が不明であるものであること。
(助言、説示及びあっせん)
第十四条 知事は、前条第一項の申立て(以下単に「申立て」という。)があったときは、当該申立てをした者
(以下この節において「申立人」という。)、相手方その他の関係人(説示にあっては、相手方又はその者を
指導し、若しくは監督する者に限る。)に対し、助言、説示又はあっせんを行うものとする。ただし、助言、
説示又はあっせんを行うことが適当でないと認められるときは、この限りでない。
2 知事は、申立てがあったときは、当該申立てに係る差別事案の事実関係について調査を行うことができる。
この場合において、申立人、相手方その他の関係人は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければ
ならない。
3 知事は、助言(第一項の規定による助言に限る。以下この節において同じ。)、説示若しくはあっせん又は
前項の調査を行うに当たり必要があると認めるときは、その対象となる差別事案に関係する県の機関に対し、
資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
4 知事は、助言、説示又はあっせんを行うに当たり必要があると認めるときは、三重県差別解消調整委員会の
意見を聴くものとする。
5 助言、説示又はあっせんの対象となる差別事案の当事者が県又は県が設立した地方独立行政法人(地方独立
行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)であるとき
は、前項の規定にかかわらず、知事は、助言、説示又はあっせんを行うに当たり、三重県差別解消調整委員会
の意見を聴くものとする。
6 知事は、あっせんによっては申立てに係る差別事案の解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち
切ることができる。
(勧告)
第十五条 知事は、助言、説示又はあっせんを行った場合において、不当な差別に該当する行為をしたと認めら
れる者が、正当な理由なく当該助言、説示又はあっせんに従わないときは、当該者に対して、必要な措置をと
るよう勧告することができる。
(意見の聴取)
第十六条 知事は、前条の規定による勧告をする場合には、あらかじめ、期日、場所、差別事案の内容及び当該
期日への出頭に代えて陳述書、証拠書類等を提出することができることを示して、勧告の対象となる者又はそ
の代理人(以下この条において「対象者等」という。)の出頭を求めて、意見の聴取を行わなければならな
い。
2 対象者等は、前項の期日への出頭に代えて、知事に対し、当該期日までに陳述書、証拠書類等を提出するこ
とができる。
3 知事は、対象者等が正当な理由なく意見の聴取(前項の規定による陳述書、証拠書類等の提出を含む。)に
応じないときは、第一項の規定にかかわらず、意見の聴取を行わないで勧告することができる。
(助言、説示及びあっせん並びに勧告の状況の公表)
第十七条 知事は、差別事案の発生の防止又は差別事案が発生した場合における当該差別事案の解決に資するた
め、助言、説示若しくはあっせん又は勧告を行った場合において、申立人、相手方その他の関係人の秘密を除
いて、必要な事項を一般に公表するものとする。ただし、特別の事情があるときは、公表しないことができ
る。
(三重県差別解消調整員会)
第十八条 第十四条第四項及び第五項の規定に基づく知事の諮問に応じて調査審議を行わせるため、知事の附属
機関として、三重県差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
2 調整委員会は、委員十人以内で組織する。
3 前項の場合において、男女のいずれか一方の委員の数は、委員の総数の十分の四未満とならないものとす
る。ただし、知事が、やむを得ない事情があると認めた場合は、この限りでない。
4 委員は、調整委員会の権限に属する事項に関し公正な判断をすることができ、かつ、人権に関して高い識見
及び豊かな経験を有する者のうちから知事が任命する。
5 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員は、再任されることができる。
7 調整委員会に、差別事案に係る専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことができる。
8 専門委員は、差別事案に係る専門の学識経験のある者のうちから、知事が任命する。
9 専門委員は、その者の任命に係る当該専門の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとす
る。
10 委員及び専門委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とす
る。
11 調整委員会は、調査審議を行うために必要があると認めるときは、申立人、相手方その他の関係人に対し、
その出席若しくは映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法
による参加を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
12 前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第四章 不当な差別その他の人権問題を解消するための基本的施策
(人権教育及び人権啓発)
第十九条 県は、市町、関係機関等と連携し、学校教育等を通じて、誰もが等しく基本的人権を享有するかけが
えのない個人として尊重されるものであることその他の人権尊重の理念を体得させ、不当な差別その他の人権
問題の解消に向けて主体的に取り組むことができる実践力を育むため、必要な人権教育を積極的に行うものと
する。
2 県は、市町、関係機関等と連携し、誰もが等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重され
るものであることその他の人権尊重の理念に対する理解を深め、不当な差別その他の人権問題の発生を防止す
るため、必要な人権啓発を積極的に行うものとする。
3 県は、市町、関係機関等と連携し、不当な差別その他の人権問題に係る当事者がその困難を克服することを
支援するため、人権侵害行為による被害に係る支援に関する制度の周知その他の人権啓発を積極的に行うもの
とする。
4 前三項の人権教育及び人権啓発(次項において単に「人権教育及び人権啓発」という。)は、学校、地域、
家庭、職域その他の様々な場を通じて、県民が、その発達段階に応じ、当該人権教育及び人権啓発に係る内容
に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用及び県民の
自発性の涵養を旨として行われなければならない。
5 県は、人権教育及び人権啓発を担う人材の育成及び確保を図るものとする。
(人権侵害行為による被害の救済)
第二十条 県は、市町、関係機関等と連携し、人権侵害行為による被害の救済を図るため、人権侵害行為を受けた者に対して、情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。
(実態調査)
第二十一条 県は、市町、関係機関等と連携し、人権施策を効果的に実施するため、不当な差別その他の人権問題の実態を把握するための調査を行うものとする。
2 県は、前項の調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな不当な差別その他の人権問題が生じない
よう留意しなければならない。
(情報の収集、蓄積及び分析)
第二十二条 県は、市町、関係機関等と連携し、人権施策を効果的に実施するため、不当な差別その他の人権問題に関する相談の事例等の必要な情報の収集、蓄積及び分析を行うものとする。
(インターネットを通じて行われる人権侵害行為の防止)
第二十三条 県は、インターネットを通じて行われる人権侵害行為を防止するため、モニタリング(インターネット上の人権侵害行為に係る情報を監視することをいう。)、インターネット上での人権啓発、インターネッ
トの適切な利用に関するリテラシーの向上を図るための教育及び啓発その他の必要な措置を講ずるものとす
る。
(災害等の発生時における人権侵害行為の防止等)
第二十四条 県は、災害その他緊急事態の発生時において人権侵害行為を防止し、及び人権を尊重するため、災害その他緊急事態の発生時における人権侵害行為を助長し、又は誘発するおそれのある風説の流布の防止のた
めの対策その他の必要な措置を講ずるものとする。
第五章 三重県人権施策審議会
第二十五条 人権施策基本方針その他人権施策について調査審議するため、知事の附属機関として、三重県人権施策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、人権施策に関する事項に関し、知事に意見を述べることができる。
3 審議会は、委員二十人以内で組織する。
4 前項の場合において、男女のいずれか一方の委員の数は、委員の総数の十分の四未満とならないものとす
る。ただし、知事が、やむを得ない事情があると認めた場合は、この限りでない。
5 委員は、人権に関し学識経験を有する者のうちから、知事が任命する。
6 委員の任期は二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
7 委員は、再任されることができる。
8 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第六章 雑則
(財政上の措置)
第二十六条 県は、この条例の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。(規則への委任)
第二十七条 この条例に定めるもののほか、条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 附 則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第三章の規定は、令和五年四月一日から施行する。(準備行為)
2 調整委員会の委員の選任のために必要な行為その他の第三章の規定の施行のために必要な準備行為は、同章の規定の施行の日前においても行うことができる。
(人権施策基本方針に関する経過措置)
3 この条例の施行の際現に存するこの条例による改正前の人権が尊重される三重をつくる条例第五条第一項の規定に基づく人権施策基本方針は、この条例による改正後の差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条
例(次項及び附則第五項において「新条例」という。)第十一条第一項の規定に基づく人権施策基本方針が定
められるまでの間、同項の規定に基づく人権施策基本方針とみなす。
(助言、説示又はあっせんの申立てに関する期間に関する経過措置)
4 この条例の公布の日から令和五年三月三十一日までの間に、新条例第十三条第四項第六号の期間が経過することとなる差別事案については、同項の規定にかかわらず、同年四月一日から起算して六月以内に限り、申立
てをすることができる。
(審議会の委員に関する経過措置)
5 この条例の施行の際現に従前の三重県人権施策審議会の委員である者は、この条例の施行の日に、新条例第二十五条第五項の規定により審議会の委員に任命されたものとみなす。この場合において、その任命されたも
のとみなされる者の任期は、同条第六項の規定にかかわらず、同日における従前の三重県人権施策審議会の委
員としての任期の残任期間と同一の期間とする。
(検討)
6 この条例の規定については、この条例の施行後おおむね四年ごとに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。