平成17年「職員の給与等に関する報告及び勧告」の概要
平成17年10月14日
三重県人事委員会
Ⅰ 本年の給与改定
1 公民給与の較差
企業規模100人以上、かつ、事業所規模50人以上の県内517の民間事業所のうちから、110事業所を抽出し、職種別民間給与実態調査を実施
4月分の公民較差について、役職・学歴・年齢別に対比して公民較差を算出
較 差 △ 1,220円(△0.31%)
(参考)平成17年人事院勧告 △1,389円(△0.36%)
平成16年県勧告 △ 146円(△0.04%)
2 改定の基本的な考え方及び必要性
改定の基本的な考え方
- 給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し適正な給与水準を確保する機能を有するものであること
- 経済・雇用情勢を反映して決定される民間従業員の給与に合わせて職員の給与を決定するという方法が最も合理的であり、広く理解を得られると考えられること
本年の勧告に当たっての検討事項
- 民間事業所においては、給与抑制措置を実施している割合は減少しており、雇用調整等の実施状況も緩和されているものの、ベア慣行のない事業所の割合は大幅に増加しており、職員の月例給が民間従業員の月例給を上回っていたこと
- 民間事業所の特別給(ボーナス)については、職員の特別給(期末・勤勉手当)の支給月数を上回っていたこと
- 国家公務員についての人事院勧告の内容(俸給月額、扶養手当の引下げ、特別給(期末・勤勉手当)の引上げ)
本委員会は、これらの状況を総合的に判断した結果、職員の適正な給与水準を確保するため、次の措置を講ずることが適当と認める
3 改定すべき事項
(1) 給料表
- 人事院勧告による俸給表の改定に準じて引下げ改定(高等学校等教育職給料表、中学校・小学校教育職給料表についても、他の給料表との均衡を考慮し、引下げ改定)
(2) 扶養手当
- 国家公務員の改定及び公民較差を考慮し、配偶者に係る支給月額を引下げ
現行13,500円→13,000円(500円引下げ) - 次世代育成支援の推進に寄与するため、配偶者以外の扶養親族のうち3人目以降の子等に係る支給月額を引上げ
現行 5,000円→ 6,000円(1,000円引上げ)
区分 | 現行 | 改定 | ||
---|---|---|---|---|
支給額 | 一人当たり | 支給額 | 一人当たり | |
配偶者 | 13,500円 | - | 13,000円 | - |
配偶者と1人 | 19,500円 | 6,000円 | 19,000円 | 据置き |
配偶者と2人 | 25,500円 | 6,000円 | 25,000円 | 据置き |
3人目以降 | 5,000円 | 6,000円 | ||
扶養親族でない配偶者を 有する場合の1人目 |
6,500円 | 据置き | ||
配偶者がない場合の1人目 | 11,000円 | 据置き |
(3) 初任給調整手当
- 医師及び歯科医師に対する初任給調整手当の支給月額の限度について、人事院勧告に準じて改定
現行269,300円 → 268,500円(800円引下げ)
(4) 期末・勤勉手当
- 民間の特別給との均衡を図るため、年間支給月数を引上げ
現行 4.40月分 → 4.45月分(0.05月分引上げ)
区分 | 期末手当 | 勤勉手当 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
6月期 | 12月期 | 6月期 | 12月期 | |||
一般職員 | 現行 | 1.4月 | 1.6月 | 0.7月 | 0.7月 | |
改定 | 17年度 | 支給済 | 据置き | 支給済 | 0.75月 | |
18年度以降 | 据置き | 据置き | 0.725月 | 0.725月 | ||
特定幹部職員 | 現行 | 1.2月 | 1.4月 | 0.9月 | 0.9月 | |
改定 | 17年度 | 支給済 | 据置き | 支給済 | 0.95月 | |
18年度以降 | 据置き | 据置き | 0.925月 | 0.925月 |
(注)特定幹部職員とは、次長級以上の職員のこと
4 実施時期
- 引下げ改定であるため、遡及することなく施行日からの適用とし、条例の公布の日の属する月の翌月の初日(公布の日が月の初日であるときは、その日)から施行
- 平成17年4月から改定の実施の日の前日までの期間に係る公民給与の実質的な均衡が図られるよう人事院勧告の趣旨に準じて、所要の調整措置を講ずる
5 上記改定による配分額(行政職)
区分 | 配 分 額 | 配 分 率 |
---|---|---|
給料 | △ 1,160円 | △ 0.30% |
諸手当 | △ 63円 | △ 0.02% |
はね返り分 | △ 36円 | △ 0.01% |
計 | △ 1,259円 | △ 0.32% |
(注)配分率については、各項目で四捨五入しているため計とは一致しない
Ⅱ 給与構造の改革
1 基本的な考え方及び必要性
- 人事院勧告において打ち出された、年功的な給与上昇の抑制と職務・職責に応じた俸給表構造への転換、勤務実績の給与への反映を図るための給与構造の改革についての基本的な考え方及び必要性については、本県も国と同様であると認識している
- 総務省の設置した「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」において、「現在の地方公務員の給与が、地域ごとの民間給与の状況の反映という観点から見ると、必ずしも十分でない」との認識が示されている
- 同研究会において、「人事委員会における公民比較と給与勧告のあり方につい て、一層の精確を期すための比較方法の改善や勧告における較差の適切な反映、 調査方法の充実等必要な措置を講じる」ことを求め、「直ちに地方公共団体が 見直しの実を上げることが困難な場合には、当面は国家公務員の給与の取組を 参考として、給与水準の見直しを行う必要がある」としている
- 地域手当については、県内に展開している民間企業の状況、人事管理面での支障等から、県内に勤務する職員について、国家公務員と同様の措置を採ることは適切でないと判断した
本委員会としては、職種別民間給与実態調査は、現時点において最も適当な調査方法であり、これに基づく現行の公民比較の方法も同様と考えているところ
しかし、上記のことから、今回の人事院勧告における給与カーブのフラット化等俸給構造の見直しに係る諸々の観点を踏まえ、同勧告に準じた給料表を導入することとする
ただし、地域手当については、人事院勧告において指定された支給地域及び支給割合を基礎に本県職員の勤務実態を考慮して算出した支給割合に基づき、県内全域において一律に支給することが適切と判断
これらを踏まえた、改革すべき具体的な事項は次のとおり
2 改革すべき事項
(1) 給料表及び給与制度の見直し
- 行政職給料表について、人事院勧告に準じて見直し
- 行政職以外の給料表についても、高等学校等教育職給料表、中学校・小学校教育職給料表を含め、行政職給料表との均衡を基本に見直し
- 中高齢層の引下げを大きくすること等による給与カーブのフラット化
- きめ細かい勤務実績の反映を行うための号給の4分割化
(2) 地域手当の新設
- 県内全域に一律に4%の地域手当を支給(県外においては、人事院勧告に準じて支給)
(3) 広域異動手当の新設
- 職員の異動の実態を考慮し、手当支給の必要性についてさらに検討
(4) 勤務実績の給与への反映
- 勤務成績に基づく昇給制度について、現行の特別昇給と普通昇給を統合し、人事院勧告の趣旨を踏まえての導入、及び勤勉手当への実績反映の拡大について、勤務実績を支給額に反映し得る仕組みを早期に構築・導入できるよう検討
- 人事院勧告に準じて、枠外昇給制度を廃止
- 55歳以上の昇給について、人事院勧告に準じ、現行の昇給停止制度を廃止し、昇給幅の抑制措置を実施
(5) 管理職手当の定額化
- 民間企業における支給実態を踏まえ、定率制から定額制へ移行
3 改革の実施スケジュール
(1) 給料表及び給与制度の見直し
平成18年度から実施
(2) 地域手当の新設
平成18年度から段階的に実施
(3) 広域異動手当の新設
手当支給の必要性について、今後さらに検討
(4) 勤務実績の給与への反映
- 勤務成績に基づく新たな昇給制度及び勤勉手当に勤務実績をより反映し得る仕組みについて、早期の構築・導入を図る
- 枠外昇給制度について、平成18年度から廃止
- 55歳以上の昇給について、平成18年度から現行の昇給停止制度を廃止し、昇給幅の抑制措置を実施
(5) 管理職手当の定額化
平成19年度から実施
新制度への経過措置
これら給与構造改革に係る諸制度の実施に当たり、人事院勧告の趣旨に準じ、所要の経過措置を講ずる
- 新給料表による支給月額が、新給料表の適用の日の前日の給料月額(以下「切替前給料月額」という)に達しない場合には、新給料表での支給額が切替前給料月額に達するまでの間、その差額を支給
- 地域手当の導入については、平成18年度から段階的に実施
Ⅲ 人事システム
「新しい時代の公」を担う多様な主体の重要な一翼を担う職員一人ひとりが県民の期待と信頼に応えていくことが必要であり、そのため、「人材」が県政を推進する上での重要な鍵となる。能力・実績を重視した新しい人事システムの構築など、人事管理の在り方について引き続き検討していくことが必要
1 人材の確保・活用・育成
- 職員の採用試験については、人物面を重視した試験方法について、検討を継続していくことが必要
- 任期付採用の拡大や、任期付短時間勤務職員の任用など、多様な任用を可能とするような新たな制度導入を検討することが必要
- 職員に求められる人材像、職員が具備すべき能力を明示し、研修機会を提供することによって人材育成及び能力開発を進めていくことが必要
2 評価制度
- 職員の能力開発・人材育成の観点を中心に、早期に全職員を対象とした評価制度を構築・導入することが必要
- 導入に当たっては、より客観的で、公正性、信頼性、納得性の高い制度を構築することが重要
- 既に導入されている管理職員の評価制度の実施状況や国の動向にも留意しながら職員側との十分な対話や試行を行いつつ、制度設計に反映させることが必要
- より適切に運用するため、十分な評価者研修の実施、評価者と被評価者との対話、評価に対する職員からの苦情への対処等の仕組みを整備することが必要
Ⅳ 公務運営
「県民が主役の県政」を実現するためには、県民の期待と信頼に応えるべく、職員一人ひとりが能力を向上させ、質の高い行政サービスの提供を目指して職務を遂行することが必要であり、そのためには、適正な勤務条件の確保に努めるとともに、職員が意欲と情熱をもって働ける環境づくりに取り組むことにより職員満足度の向上を図ることが重要
1 勤務形態の弾力化・多様化
- 業務遂行上の必要性と、人材の活用・育成・確保上の必要性から、勤務時間制度の弾力化・多様化の検討を進めることが必要。このことは、次世代育成支援にも資する
- 職員のニーズ調査を実施するなどの方法により制度の要否について検討し、必要な制度の具体化に向けた検討を進めることが必要
2 男女共同参画社会への取組
- 任命権者においては、マネジメント能力を発揮できる職務へ意欲と能力のある女性職員を積極的に配置することなどにより、さらなる計画的な女性職員の育成・職域拡大に努め、管理職への登用につなげていくことが必要
- 「メンター」(自分の経験を基に助言する先輩)の活用を検討
- セクシュアル・ハラスメントの防止については、管理職員をはじめ、すべての職員に一層の意識啓発を行うとともに、セクハラを許さない職場風土づくりや、より被害者が相談しやすい環境づくりなどの対策を講じることが必要
3 次世代育成支援
- 次世代育成支援は、職員一人ひとりが様々な形で関わっていかなければならない重要な課題。職場優先の意識等の是正、職員が休暇等を取得しやすい環境づくり、職場全体で次世代育成を支援するという意識の醸成が必要
- 現行制度の周知や各種手続きなどの窓口を明確化するなど、職員が制度の内容を理解し活用しやすい体制を整備し、現行制度の十分な活用を図ることが必要
- 男性職員の育児参加率を高めるための取組も重要。既存の休暇制度等を活用して、職員自らが育児参加プランを作成し、所属長との対話を通して育児参加を実践しやすい環境づくりを進めるなど新たな取組について検討することが必要
- 特に、妻の産前産後期間における男性職員の育児時間確保のため、5日以上の休暇取得促進を図ることとし、休暇計画書の作成など具体的な取組が必要
- 国において既に導入されている男性職員の育児参加のための特別休暇の導入についても検討することが必要
- 地域において、職員が子育て支援の活動に参加することは、職員の視野を広げ、自らの業務遂行にも役立つ。職員が参加しやすい環境づくりを行うことが必要
- これらを含め、任命権者においては、職員ニーズ等を把握しながら、実効性ある具体的方策の検討を早急に進めていくことが必要
4 労働安全衛生・健康対策の推進
- 職員の心の健康づくりや過重労働対策には、人事部門と健康管理部門との連携が重要であり、相互に協力して適切な対策を講じていくことが必要
- 学校現場も含めた職場において日常的に接している管理監督者が果たす役割は極めて大きいため、意識啓発を十分に行うことが必要
- メンタルヘルス対策においては、ストレスに関し、職員が自ら適切な対応を図ることができるようにすることが重要。ストレスチェックなど職員自身が自らのストレスの状態を把握できる機会を拡充し、併せてメンタルヘルスに対する知識や予防・軽減・対処の方法、相談先等の情報を、繰り返し提供することが必要
- 相談窓口については、設置目的の理解を深め、管理監督者や家族が気軽に相談でき、積極的に活用できる体制の充実とその周知が必要
- 早期対応のため、些細なことでも職員等がすぐに専門家に相談できる体制を、外部機関の活用も含め、複数整備することが必要
本年の勧告は、例年の給与改定と昭和32年以来約50年振りに行われる給与構造の改革の2本建ての構成となっている。
職員は、景気回復の兆しがみえてはきているものの、民間の経済・雇用情勢等は依然として楽観できない状況が続いていることを十分に認識し、全体の奉仕者としての自覚と責任、高い倫理観を持って職務に精励し、県民が主役の県政を推進していくことを強く要望する。
Ⅴ 勧告実施の要請
情勢適応の原則に基づき職員の給与水準を民間の給与水準に合わせるものとして定着している給与勧告制度が果たしている役割に対し深い理解を示され、この勧告を実施されるよう要請する。
(参考)
職員の年間平均給与
この勧告が実施されると、職員(行政職)の平均で、本年給与勧告前の年間給与636万9千円が、勧告後では636万8千円となり、約1千円の減少
年間給与は勧告前との比較で2年振りの減少
主な職種の年間給与
区分 | 行政職 | 公安職 | 高校等 教育職 |
中小校 教育職 |
全職員 |
---|---|---|---|---|---|
人員(人) | 5,476 | 2,818 | 3,947 | 9,532 | 22,567 |
平均年齢(歳) | 41.8 | 41.0 | 43.4 | 43.7 | 42.8 |
平均経験年数(年) | 20.5 | 20.8 | 20.9 | 21.4 | 20.9 |
改定前の平均給与額(円) | 387,841 | 385,015 | 428,704 | 429,895 | 413,102 |
改定後の平均給与額(円) | 386,582 | 383,680 | 427,319 | 428,563 | 411,779 |
改定前の平均年収(千円) | 6,369 | 6,346 | 7,082 | 7,086 | 6,805 |
改定後の平均年収(千円) | 6,368 | 6,343 | 7,081 | 7,086 | 6,804 |
<モデル給与例>
(単位:円)
区分 | 勧告前 | 勧告後 | 年間給与 の減少額 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
月額 | 年 間 給 与 | 月額 | 年間給与 | ||||
係員 | 25歳 | 独身 | 205,700 | 3,373,000 | 205,000 | 3,372,000 | △1,000 |
30歳 | 配偶者 | 256,300 | 4,203,000 | 255,100 | 4,196,000 | △7,000 | |
主査 | 40歳 | 配偶者、子2 | 400,300 | 6,730,000 | 398,500 | 6,722,000 | △8,000 |
主幹 | 45歳 | 配偶者、子2 | 434,900 | 7,312,000 | 433,100 | 7,306,000 | △6,000 |
課長級 | - | 配偶者、子2 | 554,900 | 9,061,000 | 552,600 | 9,051,000 | △10,000 |
次長級 | - | 配偶者 | 620,600 | 10,511,000 | 618,000 | 10,503,000 | △8,000 |
部長級 | - | 配偶者 | 722,400 | 12,346,000 | 719,500 | 12,339,000 | △7,000 |