平成16年「職員の給与等に関する報告及び勧告」の概要
平成16年10月8日
三重県 人事委員会
Ⅰ.給与
1.公民給与の較差
- 企業規模100人以上、かつ、事業所規模50人以上の県内516の民間事業所のうちから、110事業所を抽出し、職種別民間給与実態調査を実施
- 4月分の公民較差について、役職・学歴・年齢別に対比して公民較差を算出
△0.04% (△146円)
(参考)平成16年人事院勧告 0.01%(39円)
平成15年県勧告 △1.09%(△4,214円)
2 改定の基本的な考え方及び必要性
改定の基本的な考え方
- 給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し適正な給与水準を確保する機能を有するものであること
- 経済・雇用情勢を反映して決定される民間従業員の給与に合わせて職員の給与を決定する方法が最も合理的であり、広く理解が得られると考えられること
本年の勧告にあたっての検討事項
- 県内の民間事業所においては、ベースアップ中止などの給与抑制措置を実施している事業所の割合が38.1%(昨年56.0%)と減少し、雇用調整の実施状況も42.7%(昨年61.2%)と大幅に緩和されているものの、ベア慣行のない事業所の割合が37.3%(昨年14.8%)と大幅に増加し、賃金カット等の厳しい措置も引き続き実施されている状況の下、職員の月例給が民間従業員の月例給をわずかに上回っていたこと
- 民間事業所の特別給(ボーナス)については、支給月数が平成11年以降5年連続で前年より下がっていたが、本年は職員の特別給(期末・勤勉手当)の支給月数とおおむね均衡していたこと
- 国家公務員についての人事院勧告の内容(寒冷地手当の抜本的な見直しを行った上で、月例給、特別給ともに水準改定を見送り)
- 他の都道府県においても寒冷地手当の見直しが行われるほかは、月例給、特別給の改定が見送られると考えられること
- 国営企業(林野)等の旧四現業職員の賃金改定については、労使交渉により、本年4月の昇給を実施し、ベースアップは行わないとする妥結が行われたこと
本委員会は、これらの状況を総合的に判断した結果、職員の適正な給与水準を確保するため、次の措置を講ずることが適当と認めた。
3 改定すべき事項等
(1)月例給
以下の事情を総合的に勘案し、月例給の改定を見送り
- 給料表については、公民較差が小さく、世代間配分にも留意しためりはりをつけた改定を行うことは困難であることに加え、従来から人事院勧告に準じて改定を行ってきていること
- 扶養手当、住居手当、通勤手当の諸手当については、民間事業所の支給状況とおおむね均衡していること
- 公民較差が小さいことに加え、国や他の地方公共団体の勧告動向を踏まえると、較差に見合った年額相当額を年間給与で調整することは困難であること
(2)特別給
民間の特別給の支給割合(4.41月)とおおむね均衡していることから、期末・勤勉手当の現行支給月数(4.4月)を維持
(3)寒冷地手当
- 抜本的に見直しを行った人事院勧告の趣旨に準じて改定
- この結果、県内の支給地域(旧北勢町、旧大安町、旧藤原町、菰野町)はいずれも削除される。
- 支給を受けている職員に対して、国が実施する経過措置の趣旨に準じて所要の措置を実施
(4)実施時期
この勧告を実施するための条例の公布の日から実施
4 給与制度
- 民間企業においては人事評価制度の整備、職務や成果を重視した給与システムへの転換が図られており、国においては、内閣官房における能力等級制度を前提とした新給与制度の導入の検討、人事院における給与構造の基本的見直しの検討、総務省における人事委員会機能の強化等の検討がされているが、これらの動向を十分注視しながら多面的に検討していくことが必要
- 公立学校の教育関係職員の給料表について、国においては教育職俸給表(二)及び(三)が廃止されることとなったため、昨年に引き続き、各都道府県の動向も注視しつつ、所要の検討を行っていくことが必要。また、教育職員関係の諸手当の在り方についても検討が必要
- 通勤手当については、人事院において比較給与種目から外すなど、官民比較方法の見直しを検討するとしているので、その動向について注視していくことが必要
- 近年、いわゆるパーク・アンド・ライド方式等による通勤方法を推進するための通勤手当の在り方について検討すべき旨の報告を行ってきたが、今後、通勤手当が比較給与種目から外れた場合は、任命権者においても、このことについて検討が必要
Ⅱ.人事システム
「県民しあわせプラン」を推進する上で、県民が満足する行政サービスを的確に提供できるよう、職務・職責に応じた給与等の処遇も含め、能力・実績を重視した新しい人事システムの構築に取り組んでいくことが必要
1 人材の確保・活用・育成
- 職員の採用試験については、人物面をより重視した試験方法に向けた検討を引き続き推し進めることが必要
- 任期付採用の拡大や、任期付短時間勤務職員の任用について、制度導入を検討することが必要
- 職員の人材育成、能力開発については、組織、人事、研修の一体的な取組が必要
- 人材育成に関する基本的な方針について改めて検討した上で、職員個人のキャリアデザインも考慮しながら、人材活用・育成を図っていくことが必要
2 評価制度
- 既に導入されている管理職員の評価制度の実施状況や国の動向にも留意しながら職員側と十分な対話を行いつつ、早期に全職員を対象とした評価制度の構築・導入を図ることが必要
- 各職場において円滑な導入を図るためには、試行を十分に行い、より客観的で、公正性、信頼性、納得性の高い制度となるよう努めることが必要
- 評価に対する任命権者等における相談窓口の設置や十分な評価者研修を実施していくことが必要
Ⅲ.公務運営
「県民が主役の県政」を実現するためには、県民の視点に立って高い目標を掲げ、県民とともに挑戦的に職務を遂行することが必要であり、そのためには、適正な勤務条件の確保に努めるとともに、職員が意欲と情熱をもって働ける環境づくりに取り組むことにより、職員満足度の向上を図ることが重要
1 勤務形態の弾力化・多様化
- 県民ニーズの多様化など業務遂行上の観点と、仕事と家庭の両立など人材確保・活用・育成上の観点から、勤務時間制度の弾力化・多様化を進めることが必要
- 育児を行う職員個人の意向に基づく早出・遅出勤務の適用を可能とするなど弾力的な運用について検討が必要
- 人事院の動向を注視しつつ、多様な勤務形態の導入について検討が必要
2 男女共同参画社会への取組
- 任命権者においては、女性職員の職域の拡大を図ることが必要であり、意欲と能力のある女性職員をマネジメント能力を発揮できる職務へ配置することなどにより、能力の開発と向上を図り、管理職への登用につなげていくことが必要
- セクシュアル・ハラスメントの防止や被害者救済については、管理職員の役割が重要であり、研修等を通じて管理職員の意識啓発や知識の充実に努めることが必要
- アンケートや意見交換を行いながら、各職員への意識啓発やセクハラを許さない職場風土づくりに努めるとともに、被害者が相談しやすい体制を整備していくことが必要
3 次世代育成支援
- 職員の子育て期における休暇制度の見直し、休暇等の取得促進、取得しやすい職場環境の醸成等を図ることが必要
- 男性の積極的な育児参加のためには、男性の育児休業、部分休業の取得の促進が必要であり、職場内での応援体制づくり、正確な情報の周知徹底、取得しやすい環境づくりに取り組むことが必要
- 円滑な職場復帰が図られるようITの活用等により職場関連情報の提供やスキルアップの機会の付与が必要
- 今年度中に各任命権者が策定する「特定事業主行動計画」については、実効性のあるものとなるよう、対応策等も積極的に検討されることが必要
4 労働安全衛生・健康対策の推進
- 長時間勤務職員の健康管理のための取組を進める上では、人事管理部門と健康管理部門との連携が重要であり、相互に協力して適切な対策を講じていくことが必要
- メンタルヘルス対策においては、セルフケアが十分機能するよう、知識を身につける取組をさらに充実させることが必要。管理監督者に対しては、ラインケアの役割を果たすことができるよう、実効性のある研修プログラムの策定・実施が必要
- 相談体制については、外部相談窓口の充実等により気軽に相談できる体制づくりを進めることが必要
- 「勤務軽減制度」については、制度の趣旨を踏まえ、円滑に運用していくことが必要
5 苦情相談等
- 苦情相談に当たっては、各任命権者と十分に連携協力を図りながら、相談体制の整備を行っていくこと
- 不服申立制度におけるあっせん手続の整備など、国の動向を注視しつつ対応することが必要
本年の勧告は、国と同様、月例給と特別給の双方について改定を行わないこととするものであり、昨年まで5年連続で減り続けてきた年間給与を前年と同じ水準に維持する内容としている。
職員は、民間の経済・雇用情勢等は依然として厳しい状況が続いていることを十分に認識し、全体の奉仕者としての自覚と責任、高い倫理観を持って職務に精励し、県民が主役の県政を推進していくことを強く要望する。
Ⅳ.勧告実施の要請
情勢適応の原則に基づき職員の給与水準を民間の給与水準に合わせるものとして定着している給与勧告制度が果たしている役割に対し深い理解を示され、この勧告を実施されるよう要請する。
(参考)
職員の年間平均給与
この勧告が実施されると、職員の年間平均給与は、6年ぶりに前年の水準が維持されることとなります。
1.主な職種の年間給与
区分 | 行政職 | 公安職 | 高校等 教育職 |
中小校 教育職 |
全職員 |
---|---|---|---|---|---|
人員(人) | 5,484 | 2,784 | 4,001 | 9,547 | 22,612 |
平均年齢(歳) | 41.4 | 41.2 | 43.0 | 43.4 | 42.5 |
平均経験年数(年) | 20.2 | 20.9 | 20.5 | 21.1 | 20.7 |
平均給与額(円) | 387,115 | 402,040 | 433,214 | 428,609 | 415,755 |
平均年収(千 円) | 6,342 | 6,565 | 7,117 | 7,061 | 6,827 |
<モデル給与例>
区分 | 月額(円) | 年間給与(円) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
係員 | 25歳 | 独身 | 205,700 | 3,373,000 | ||
30歳 | 配偶者 | 256,300 | 4,203,000 | |||
主査 | 40歳 | 配偶者、子2 | 400,300 | 6,730,000 | ||
主 幹 | 45歳 | 配偶者、子2 | 434,900 | 7,312,000 | ||
課長級 | - | 配偶者、子2 | 479,400 | 8,155,000 | ||
次長級 | - | 配偶者 | 519,400 | 9,297,000 | ||
部長級 | - | 配偶者 | 580,600 | 10,645,000 |
2.寒冷地手当の改定
改定による影響
- 現行の支給地域(旧北勢町、旧大安町、旧藤原町、菰野町)をいずれも削除
- 経過措置終了後は、約1,400万円(約600人)が削減される見込み