平成13年度第8回意見書(河川事業他)
1 経過
平成13年10月19日に開催した平成13年度第5回三重県公共事業再評価審査委員会において、熊野市より海岸環境整備事業1箇所、平成13年10月30日に開催した第6回委員会において、県より河川事業1箇所、鈴鹿市より河川事業1箇所の審議依頼を受けた。
また、平成12年度に審議を行い、多自然型川づくりにより費用が増加したため、コスト縮減の努力を行いその結果を当委員会に報告するよう求めた県の4箇所について、再審査の依頼を受けた。
各審議対象事業に関して、県および各市の担当職員から事業説明を受けるとともに、審議資料に基づき審議を行った。
2 対応方針案に関する意見
審議対象事業に関して慎重な審議を行った結果、以下のような意見を委員会としてとりまとめ、三重県知事および各市長に対して答申するものである。
(1)河川事業(県事業)
① 二級河川笹笛川統合河川整備事業
② 二級河川相川広域基幹河川改修事業
③ 一級河川足見川広域一般河川改修事業
④ 一級河川名張川広域一般河川改修事業
⑤ 二級河川前川広域一般河川改修事業
①については、平成4年度に事業着手後、10年を経過して継続中の事業である。
再評価の結果、現状流下能力の不足及び流域内の開発による流出量の増大に対応し、河川改修を行い治水安全度の向上を図り、浸水等の被害を防止するといった事業の必要性、費用対効果分析の結果から事業の投資効果が認められることから、事業を継続するといった対応方針案について了承する。
②~⑤は、平成12年度に再評価を行った結果、「今後検討される三重県型の河川管理方法の検討を踏まえ、多自然型工法採用によるコストアップ分については、縮減の努力を行い、その結果を1年後に当委員会に報告し、再審査に付すこと。」といった意見を付し、継続を了承した事業である。
今回は、平成13年度に策定した、「自然に配慮した川づくりの手引き(案)」に基づき、護岸工法等の計画の見直しをされ、コスト縮減が図られた。
今後、さらに地域の自然環境との調和を図るため、柔軟、多様な対応を図られるとともに、新しい技術的な知見や工法の採用により、さらなるコスト縮減に努められるよう要望する。
また、今回制定された「自然に配慮した川づくりの手引き(案)」については、今回実施された検討手法や検討結果などの計画のケーススタディ、その後の施工事例、モニタリング結果などの蓄積を行い、よりよい手引きとなるよう要望する。
さらに、「河川改修」から自然環境を含めた「川づくり」へと発想の転換を図り、
- 流域全体を総合的にみて、必要な整備範囲を明確にする
- 自然の復元力等に期待する
- 生態系保全の観点から、河川維持流量(正常流量)についての考え方の整理を行い、低 水、渇水時の配慮
- 魚類等の生活から見た河川環境の保全
- 河川の景観
- 研究機関と連携した三重県独自の新工法の検討と産業育成
等の検討を進め、三重の川づくりについて全国に向けた情報発信を行われるよう期待する。
(2)河川事業(鈴鹿市)
① 準用河川北長太川準用河川改修事業
①については、平成4年度に事業着手後、10年を経過して継続中の事業である。
再評価の結果、現状流下能力の不足から浸水被害がたびたび発生しており、河川改修を行い治水安全度の向上を図り、浸水等の被害を防止するといった事業の必要性、費用対効果分析の結果から事業の投資効果が認められることから、事業を継続するといった対応方針案について了承する。
(3)海岸環境整備事業
① 新鹿海岸
①については、平成4年度に事業着手後、10年を経過して継続中の事業である。再評価の結果、背後の人家等を高潮の被害から保全するとともに海浜利用の向上を図るといった事業の必要性、費用対効果分析の結果から事業の投資効果が認められることから、事業を継続するといった対応方針案について了承する。
なお、整備した施設の十分な活用を図る観点から、熊野市あるいは東紀州全体における観光戦略等、ソフト施策とも十分な連携を図られるよう要望する。
また、事業効果の説明に関しては、費用便益分析を実施しているが、費用便益費が大きいと、担当者にコスト意識、縮減の努力が図られない恐れや、過大、過剰な設備となる懸念もある。事業の効果と、妥当な投資に関しては区分して、できる限りのコスト縮減に努めること。
(4)公共トイレ
過去3年間に県が設置した公共トイレの調査結果について報告を受けた。小規模な建築物であり、設備等に費用を要することは理解できるが、その単価は一般に比較すると高いと考えられる。公共トイレの場合は、立派なものつくることではなく、メンテナンスを大事にして、きちんと清潔に長い間維持管理ができるようなシステムの方に力を入れられ、維持管理も含めて、より少ないコストで住民満足度の高いサービスの提供に努められたい。