世界的な代表事例
導入企業 | 相手先企業 | 対象プロセス | ベンチマ-キングの効果 |
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ゼロックス | LLビーン | 倉庫業務 | ピッキング(部品抽出)業務の効率化 在庫削減(年間200万ドルのコスト減) 納入業者を5000社から500以下に |
発見したベスト・プラクティス ・コンピュータが作成する選品リスト ・台車の棚指定 ・正しい梱包順と箱の大きさ指定等 | |||
アメリカン・エキスプレス | 請求回収業務 | 顧客満足度が38%向上 間接事務費を50%圧縮 資材調達費を40%カット | |
サウスウエスト航空 | インディ500のピットクルー | 給油・整備プロセス | 給油、整備時間を45分から15分に圧縮 |
発見したベスト・プラクティス ・事前の段取り ・専用の工具 ・熟練とチームワーク | |||
フォード | マツダの米国関連会社 | 原価管理 | 原価分析業務を経理部内から工場現場に移管し、大幅なコスト削減を達成 |
クライスラー | 本田技研工業 GE |
受注~出荷サイクル | 受注~出荷サイクルを80日から37日に短縮 |
GE | 産業横断調査 | 品質管理活動 | 米国の優良企業が持つ品質管理の特徴を分析 |
その他の事例(リッツカールトン、AT&T) | |||
* GEでは、採用の方法、給与体系、現地就業員への対処方法等についてもベンチマーキングを実施している。 |
ベンチマ-キングにおいて先駆的な役割を果たしたのが米国ゼロックス社である。ゼロックスはかつて複写機の独占企業として繁栄を誇ったが、1970年代後半に特許が失効となり多くの企業が複写機市場に新規参入してきたため、競争力を失い深刻な経営不振に陥った。中でも、キャノン・リコ-・ミノルタなど日本企業は高品質で低価格の製品を続々と市場に投入してきた。日本製品の価格はゼロックスの製造コストより低く、日本企業は決定的なコスト競争力を持っていた。その結果、ゼロックスの市場シェアは急速に低下し、特に低価格品市場は日本企業に席巻されてしまった。
こうした状況の下、ゼロックスの経営陣は、「品質・時間・コスト」のすべての面で自社が日本企業に劣っていることを謙虚に認め、全社的なTQMの導入を含めて企業革新を強力に推進した。その結果、ゼロックスはべンチマ-キングに取り組み、ベンチマ-キングを体系的な手法として確立するに至ったのである。
ゼロックスは数多くのベンチマーキングを行ったが、その中でも特に有名な事例が、アウトドア用品の通信販売業者「LLビーン」に対するベンチマ-キングである。この事例は、自社のパフォーマンスをはるかに上回るベスト・プラクティスを業界外に発見し、それを自社に応用するというプロセス改善の成功事例として語られるようになった。その後、ゼロックスは自社のベンチマ-キング事例を公開し、ベンチマ-キングの普及発展に大きく寄与した。
サウスウエスト航空(SWA)のベンチマーキングも著名である。同社は、現在、米国で最も成長性と収益性に優れた航空会社として有名であるが、その発展は積極的な経営革新によってもたらされたものである。
SWAは、発足時小さなロ-カル航空会社に過ぎず、新路線を獲得したにもかかわらず、航空機を新規購入する資金余力がなかった。SWAでは、その平均飛行時間が1時間程度であるのに対し、給油・整備に45分間を要していた。1時間の飛行に対して45分間の給油・整備はいかにも不効率である。こうした背景の中、経営陣は給油・整備時間を大幅に短縮することによって航空機の稼働率を上げ、新たに航空機を購入しないで既存の航空機を新路線に投入しようとした。
まず、他の航空会社の給油・整備時間を調査したが、他社の平均は50分程度であり、自社の45分が最短値であり参考にならなかった。しかし、同社の経営陣はこの結果に飽き足らずに業界外にベストを求め、インディ500マイルのピットクルーをベンチマーキングしたのである。
リッツカールトン・ホテルが重要視するプロセスの一つに、ハウスキーピングがあった。同ホテルでは、ハウスキーピングのプロセスを改善するために、ベンチマーキングを実施した。その結果、下記のような大きな効果があった。
(1)目標 :ハウスキーピング時間の半減
(2)相手先:系列ホテルと病院
(3)発見されたベスト・プラクティス
● 使用済みリネン類を同日中にランドリー完了まで処理する
(客室担当の勤務開始時点にリネン・サプライの準備が可能になる)
● リネン類は、3セットでは多く、2セット(週末)と1.5 セット(平日)で十分
● チームによる清掃 など
(4)効果:
・客室清掃時間の65%短縮
・生産性が1人当たり客室数13から15に向上
・リネンの購入が年間6万ドル節減
・仲間意識の士気の向上
AT&Tにおける部材差別化サービス(MODSプログラム)
AT&Tでは、部材オーダーにおける製品(MO製品)をタイムリーに合理的コストで顧客に配送する方法を求めてベンチマーキングをおこなった。
(1)目標 :顧客の期待を整合するプロセス
(2)相手先 :
・コンピュータ・メーカー
・コピー機
・周辺機器メーカー
・重機械メーカー
(3)発見されたベスト・プラクティス
● カスタマー・サービスに対するトップダウンの強いコミット メント(責務)
● プロセスにかかわらず全ての関係者による内部チーム編成
● 受注~納品の短いサイクルタイム
● 発送業務の効率化と関連経費の削減、その他
(4)効果:
・オンタイム・デリバリー(指定時間納入)の指向が10%向上