現在位置:
  1. トップページ >
  2. スポーツ・教育・文化 >
  3. 人権教育 >
  4. 人権教育(調査・資料) >
  5. 人権学習教材・指導資料 >
  6. 講座報告 >
  7.  2015(平成27)年度 人権学習指導資料 「気づく つながる つくりだす」活用のための講座 講演記録
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2.  教育委員会事務局  >
  3. 人権教育課  >
  4.  調査研修班 
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line
平成28年03月01日

 

2015(平成27)年度 人権学習指導資料「気づく つながる つくりだす」活用のための講座 講演記録
 

「性的マイノリティの人権」

宝塚大学看護学部教授 日高 庸晴(ひだか やすはる)さん
(2016年3月作成)

 
  2015(平成27)年度の「人権学習指導資料『気づく つながる つくりだす』活用のための講座」では、性的マイノリティの人権をテーマとして、宝塚看護大学看護学部教授の日高 庸晴(ひだか やすはる)さんにご講演いただきました。
 ここではその一部を要約し、ご紹介します。

 

 

 

1 性的マイノリティの「内訳」を捉える大切さ

右寄せ

 

 同性愛者、両性愛者、トランスジェンダー(生まれた時の法的・社会的性別とは違う性別で生きる人、生きたいと望む人。性同一性障がいを含む。)など、性的マイノリティは人口の約5%前後と推定されている。現在の日本では、このうち性同一性障がいが話題になることが非常に多い。学校の教職員と話していても、性同一性障がいの子どもばかりが話題になる。しかしカリフォルニア大学ロサンゼルス校が実施した調査では、「トランスジェンダーである」と回答した人は約0.3%であったのに対し、「 同性愛者または両性愛者だ」と答えた人は約3%いた。これはアメリカでの調査であるが、日本でも同性愛者、両性愛者の子どもが、トランスジェンダーの10倍程度いる可能性があると言える。
 
日本の同性愛者または両性愛者の男性を対象とした調査では、65%程度が「自殺を考えたことがある」と回答している。このような状況をふまえて取組を進めることが急務である。

2 日本における性的マイノリティに対する認識

 最近では、性的マイノリティの方がテレビ等で活躍されることも多くなってきている。しかし、笑いの対象として描かれていることも多い。こういう状況をみると、法務省等が性的マイノリティを人権課題の一つとして挙げていても、社会の認識はまだまだ進んでいないと思われる。
 学校においてもそうではないだろうか。例えば、文化祭や体育祭で、笑いをとるために女装することが許容されていないだろうか。「文化祭(体育祭)だし、少しくらいはいいのでは」という人は、「他の人権課題でも同じような反応をするのだろうか」と考えてみてほしい。普段は絶対にダメだと言っている差別を、「今日だけはいい」とすることはありえないのではないか。
 
約6,000人の教職員を対象にした性的マイノリティに係わる意識調査【教員5,979人のLGBT意識調査レポート】の結果からは、教職員の基礎的な知識においても課題があることがわかる。例えば、性的指向は自由に選べるものではないにも関わらず、「同性愛になるか異性愛になるかは本人の選択によるものだ」という設問に対して、「そう思わない」と正しく認識している人は25.4%にすぎない。38.6%の人が「そう思う」と答え、「わからない」と答えた32.8%を加えると70%を超える人が正しく認識していないことが明らかになった。

3 学校で取組を進めるにあたって

(1)性的マイノリティに関する情報発信を

 性的マイノリティの子どもたちは、生活の様々な場面で、自分の存在が否定されるような、「いないもの」として扱われるような経験をさせられていることが多い。性的マイノリティに係わる情報を発信することにより、「学校は『性的マイノリティはここにも当然いる』と考えている」というメッセージを届けることが重要である。
 
また、教職員から、「性的マイノリティの子どもを見分ける力が必要ではないか」と言われることがあるが、「見分ける力」ではなく、「その子どもが困った時に言えるような環境や人間関係をつくることが大切だ」とお伝えしている。そういう環境や人間関係をつくるためにも情報発信は必要である。例えば以下のような方法で、性的マイノリティに係わる情報発信をしてはどうだろう。

 ・目につきやすいところにポスターを貼る 
 
・書籍を保健室や図書室に置く
 
・保健室等に壁新聞を貼る
 
・学級通信等で取り上げる
 
・授業で取り扱う
 
・校長が講話の中で話題にする 等

(2)カミングアウトの困難さについての理解を

 人権教育に長年熱心に取り組んできた教職員から、次のような話を聞いた。
 
在学中、人権に係わる活動をずっと一緒にやっていた被差別部落出身の子どもが、おとなになってから、「実は性的マイノリティである」と話してくれた。「あのころ、被差別部落の話はできたが、性的マイノリティの話は、どうしてもできなかった」と言っていたという。
 
子どもがカミングアウトしてくれたら、「勇気を出して、話をする相手として自分を選んでくれたのだ」と受け取ってほしい。

(3)人間関係構築の成功体験を

 ある先生が、「性的マイノリティの子どもに、学校の中で『自分のことを話しても関係が切れることはない、むしろ、さらによい関係構築につながる』という成功体験をさせてやりたい」と言っておられた。「自分のことをわかろうとしない人や離れていく人もいるかもしれないが、ちゃんとわかってくれる人もいる。そういう人間関係も自分は築けるのだ」という自信を持って社会に出て行けるようにすることが大切だと思う。

 以上、日高さんのご講演から一部をご紹介しました。
 
まずは、私たち教職員が性的マイノリティについての正しい知識を持つことが重要だと言えます。また、授業をはじめ、学校生活の様々な場面で教職員が発する言葉や示す態度の影響の大きさについても共有することが重要だと思われます。日高さんのホームページ【Health-issue】等もご参照いただき、各校における教職員研修や人権学習等の取組の充実につなげていただければと思います。

 

 日高さんのホームページで公開されている情報の例

  「ゲイ・バイセクシュアル男性の健康レポート
  
教員5,979人のLGBT意識調査レポート
  
あなたがあなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」(法務省委託人権啓発ビデオ)
  
わが子の声を受け止めて 性的マイノリティの子をもつ父母の手記
  「『あなたになら話せる』その安心がスタートライン」 
  「わが国における都会の若者の自殺未遂経験割合とその関連要因に関する研究

 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
津市一身田大古曽693-1(人権センター内)
電話番号:059-233-5520 
ファクス番号:059-233-5523 
メールアドレス:jinkyoui@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000124427