今回は,CAPみえ事務局の日比野一子さんより寄稿をいただきました。
CAPプログラムとは
(特定非営利活動法人 CAPセンター・JAPANホームページ http://www.cap-j.net/ より)
CAPのプログラムは,1978年に米国オハイオ州コロンバスのレイプ救援センターで初めて開発・実施されました。
以来,全米200以上の都市で幼稚園から高校までの授業に採り入れられ,100万人以上の子どもたちが学校のCAPプログラムに参加したと推定されます。
1986年にはヨーロッパに伝わり,1988年には中南米でも活動が始まりました。現在では,日本をはじめ世界16カ国に広がっています。
1985年に森田ゆりさんによって日本にCAPプログラムが紹介されました。
1995年の秋,東京,大阪,広島,熊本などでCAP(Child Assault Prevention=子どもへの暴力防止プログラム)を実践する専門家( CAPスペシャリスト)を養成する講座が相次ぎ開催されました。
その後,養成講座は全国各地で開催され,これまでに北海道から沖縄までCAPスペシャリストたちのグループの数が130以上に増え,おとなや子どもたちはCAPプログラムを身近で受けることができるようになりました。
1998年には各グループのネットワークセンターとして「CAPセンターJAPAN」が設立され,2002年には特定非営利活動法人(NPO法人)となりました。
―いじめ、誘拐、虐待から大切な自分を守るためにー
CAPみえ事務局 日比野一子
CAPとは「Child Assault Prevention」の頭文字をとったもので,「子どもへの暴力防止」と訳されます。
CAPプログラムは,1978年アメリカのオハイオ州コロンバスにあるレイプ救援センターで開発されたものです。
この年,小学校2年生の子どもがレイプされるという事件がありました。その話を聞いてしまったまわりの子どもたちは,恐怖を訴えたり,わけもなく泣き出したり,おねしょをするなどの行動の変化がおきました。そのことを心配した一人の小学校教師が,このレイプ救援センターに子どもたちが安心感を取り戻すよう,力になってもらえないかと電話をかけたのがきっかけです。
子ども向けのプログラムのなかったセンターでは,すぐに多くの専門家の協力を仰ぎ,子どもたちが怖がることなく楽しく暴力から自分自身を守るプログラムを作り出しました。そしてこのプログラムは性暴力だけではなく,いじめや誘拐などのさまざまな暴力から自分自身を守る力を学びます。
安心・自信・自由を「生きるためになくてはならない大切な権利」として学びます。そしてこの3つの権利が奪われそうになったとき,「いやと言う」意思表示,「逃げる」ことによって身を守る,そしてたとえ何もできなくても「誰かに話す」ことができるよと伝えます。そして,自分の権利を守る方法や友だちの権利を守る方法を,寸劇(ロールプレイ)や話の中で,子どもたちと一緒に考えていく参加型体験学習(ワークショップ)です。
CAPプログラムは,子どもの年齢によって内容が少しずつ変わります。
就学前の子どもには,約20分の話を3日間に分けて行い子どもがあきずに,集中できるように話します。内容も寸劇や人形劇,ストレッチなどを取り入れてあります。
小学校では60分~70分かけて、3つの権利について話をします。ワークショップの基本的な内容は,どの学年にも共通です。しかし,低学年と高学年が同じ内容では,どちらの学年も話に興味がもてません。そのため,学年にあわせて話のテンポや質問,寸劇などが変えてあります。
中学校では,70分のワークショップを2日間行います。自発的な発言の少ないこの年の子どもたちが参加しやすいように,小グループでの話し合いなどを取り入れてあります。
これらのどのワークショップでも,終了後にトークタイムという時間を設け,子どもたちがワークショップで感じたことや,話したいことを聴く時間を設けています。
このワークショップをとおして,子どもたちに「自分の中には,自分の権利や友だちの権利を守る力がある」ことを知ってもらい「わたしは大切な存在である」ということを感じてもらいます。
これが「エンパワメント(empowerment)」の思想です。
エンパワメントは「力をつけること」という意味で使われることがあります。しかし,本当の意味は「内なる自分の力」に気づくことです。一人ひとりが自分自身の力を信じ,尊重することから始まります。「わたしは大切な存在」と認められるからこそ,権利が奪われそうになったとき,権利を守れるのです。
人は誰でも,すばらしい力を持って生まれてきます。どんなに小さな子どもでも,自分で問題を解決する力を持っているのです。
CAPプログラムは子どもたちに「安心・自信・自由」の権利を守ることの大切さを伝え,自分を大切にする気持ちを育てます。
参考文献
「ノー」をいえる子どもに サリー・クーパー著 童話館出版
エンパワメントと人権 森田ゆり著 解放出版社
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