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平成21年02月10日

三重の統計 - みえDataBox

県民経済計算用語解説(93SNA)

県民経済計算のねらい

県民経済計算は、国における国民経済計算と共通する基本的な考え方や仕組みに基づき構成されており、都道府県という行政区域により地域を区分し、社会会計方式に基づき県という単位で一定期間(会計年度)の経済活動の成果を計測するものである。

県民経済計算は、県民経済の循環と構造を、生産、分配、支出の3面にわたり計量把握することにより県民経済の実態を包括的に明らかにし、総合的な県経済指標として行財政経済政策に資することを主な目的とする。あわせて国民経済における県民経済の位置を明らかにするとともに、各県相互間の比較を可能とすることによって、国民経済の地域的分析および地域の諸施策に利用しようとするものである。


県内主義と県民主義

県民経済計算の把握には、県内主義(属地主義)と県民主義(属人主義)がある。

県内主義(属地主義)は、県という行政区域内で生み出された付加価値をその生産に従事した人の居住地にかかわらず把握するものである。一方、県民主義(属人主義)は県内居住者が地域にかかわらず生み出した所得を把握するものである。

この県民経済計算推計では、総生産と総支出は県内主義(属地主義)で、県民所得(分配)は県民主義(属人主義)で把握している。また、居住者とは個人のみでなく、企業、政府機関など経済主体全般に適用される概念である。


経済成長率

経済活動規模の拡大の程度を数値で表したもので、県内総生産(=県内総支出)の対前年度に対する増加率をいう。その時点での市場価格で集計した名目値による経済成長率と、物価水準の変動分を除去した実質値による経済成長率とが算出される。


市場価格表示と要素費用表示

県内純生産(内ベース)および県民所得(民ベース)の表示には、市場価格表示と要素費用表示とがある。

市場価格表示とは、市場で取り引きされる価格で評価する方法をいう。また要素費用表示とは、生産要素(労働、土地、資本)に対して支払った企業の費用(賃金、地代、利子、利潤など)で評価する方法をいう。さらに市場価格は、生産者から出荷される時点で評価する生産者価格と、これに運輸、商業のマージンを加えた購入者価格に区分される。

これら二つの表示方法によって推計された県内純生産および県民所得は、式であらわすと次のようになる。

市場価格表示の県内純生産 要素費用表示の県内純生産 生産・輸入品に課される税 補助金
市場価格表示の県民所得 要素費用表示の県民所得 生産・輸入品に課される税 補助金

総(グロス)と純(ネット)

純生産物を評価するに当たって固定資本減耗(いわゆる減価償却費)を含むものを「総(グロス)」概念という。これに対して固定資本減耗を控除したものを「純(ネット)」概念といい、式であらわすと次のようになる。

市場価格表示の県内総生産 市場価格表示の県内純生産 固定資本減耗

経済活動別分類

経済活動別分類は、財貨(モノ)・サービスの生産および使用に関与する性格の違いによって経済取引の主体を分類したものである。技術的な生産構造の解明に力点がおかれるため、実際の作業を行う工場や事業所などが分類単位としてとられ、具体的には、a産業、b政府サービス生産者、c対家計民間非営利サービス生産者の3つに分類される。


a 産業

産業は、市場においてコストを上回る価格で販売することを目的として、いいかえれば利潤を目的として、財貨・サービスを生産する事業所から構成される。

産業は、民間企業の事業所が中核としての地位を占めるが、公的企業のうち、投入と生産技術が民間企業と類似して料金がコストをカバーしなくても価格が販売される財貨・サービスの量と質に比例し、かつその購入が購入者の意思に基づいているものも含まれる。

上記以外に、次のものも産業に含まれる。

  • 主として企業のためにサービスを提供することを目的とする民間非営利団体
  • 家計の所有する住宅や政府、民間非営利団体が職員のために所有する住宅の帰属サービス
  • 家計、政府、民間非営利団体が自己使用するために行う住宅および非居住用建物の建設活動

b 政府サービス生産者

政府サービスとは、国家の治安や秩序の維持、経済厚生、社会福祉の増進などのためのサービスで、政府以外によって効率的かつ経済的に供給されないような、社会の共通目的のために行われる性格のものをいう。政府サービス生産者には、中央政府(国出先機関)、地方政府(県、市町村)などの行政機関のほか、社会保障基金や事業団の一部など特定の非営利団体が含まれる。この内訳部門の電気・ガス・水道業とは下水道業と廃棄物処理事業を、またサービス業とは国公立の教育、学術研究機関をいい、公務とはその他の一般行政活動をいう。


c 対家計民間非営利サービス生産者

対家計民間非営利サービス生産者は、個人の自発的な意思に基づく団体として組織され、その活動は利益の追求を目的とせず、他の方法で効率的に提供し得ない社会的・地域的サービスを家計に提供するものである。例えば、労働組合、政党、私立学校、宗教団体などが該当する。


制度部門別分類

所得の受払いと消費、ならびに資産の運用と調達を分析するための分類であり、経済活動別分類の単位が事業所単位であるのに対して、制度部門別分類の単位は「それ自体の権利により資産を所有し、また負債を負い、他の主体と経済取引に携わることができる経済主体」とされている。したがって企業の場合、法人が単位となる。

具体的には、a非金融法人企業、b金融機関、c一般政府、d家計(個人企業を含む)、e対家計民間非営利団体の5つに分類される。


a 非金融法人企業

非金融法人企業は、主に民間の事業法人がそのほとんどを占めるが、このほか国の企業特別会計、公団、公営企業、特殊法人の一部など公的機関であっても、民間の産業と類似の活動を行っている機関も含まれる。ただし、金融機関は独立した制度部門とされるため、ここには含めない。


b 金融機関

金融機関には、銀行、保険、信託、証券会社など民間の金融機関のほか、公庫等政府系金融機関、郵便貯金や簡易保険など国の特別会計の一部など、公的機関であっても民間の金融機関と類似の活動を行っている機関も含まれる。


c 一般政府

公的機関のうち、他に分類されないものがすべて含まれる。したがって、政府の省庁は含まれるが、非金融法人企業に分類される企業特別会計や、金融機関に分類される郵便貯金などは含まれない。

経済活動別分類における「政府サービス生産者」と同じ範囲である。


d 家計

世帯としての通常の意味での家計のほか、個人企業も含まれている。したがって、ここでいう家計とは、消費主体としての側面と事業主体としての側面も併せ持っていることになる。

なお、持ち家の帰属計算に際して、擬制的に持ち家産業なるものを想定しているが、この仮想的な産業は個人企業として取り扱うこととしている。したがって、これは制度部門別分類において家計に含まれていることになる。


e 対家計民間非営利団体

経済活動別分類における「対家計民間非営利サービス生産者」と同じ範囲である。


経済活動別県内総生産

経済活動別県内総生産とは、各年度内に県内各経済部門の生産活動によって新たに付加された価値(成果)の生産者価格による評価額を経済活動別に示したものである。県内概念によるものであり、県内で生産された生産物であれば県外居住者に対して分配されるものも含まれる。


a 県内総生産(市場価格表示)

県内の生産活動によって新たに生み出された付加価値の合計額であり、産出額から中間投入額(原材料、燃料等の物的経費およびサービス経費等)を控除したものにあたる。

また市場価格表示には生産者価格と購入者価格とがあるが、ここでは生産者価格を使用している。


b 固定資本減耗

生産の過程によって生じる構築物や機械設備などの再生産可能な有形固定資産の減耗分を評価したもので、通常の減耗および損傷分を補填するのに必要とされる額(減価償却費)と、予想される陳腐化および通常生ずる程度の偶発事故による損失(資本偶発損)からなる。

また93SNAからは、道路、ダムなどの一般政府が所有する社会資本についても固定資本減耗を加味することとしている。


c 生産・輸入品に課される税

財貨・サービスの生産、販売、購入または使用に際して生産者に課せられる租税および税外負担で、税法上損金算入が認められて所得とはならず、かつその負担が最終購入者に転嫁されるものをいう。これは生産コストの一部を構成するものとみなされる点で「所得・富等に課される経常税」(いわゆる直接税)と区別される。

具体的には、消費税、酒税、関税、印紙税、法人・個人事業税、不動産取得税などがあげられる。特殊な例としては、家計に対する固定資産税も、持ち家家計は住宅賃貸業を営んでおり、帰属家賃の一部を構成するという観点から生産・輸入品に課される税として扱われる。


d 補助金

産業振興あるいは製品の市場価格を低める等の政府の政策目的によって、政府から産業に対して一方的に給付され、受給者の側において収入として処理される経常的交付金をいう。公的企業の営業損失を補うためになされる政府からの繰入も補助金に含まれる。補助金によって、その額だけ市場価格が低められるため、負の生産・輸入品に課せられる税とみなすことができる。

なお、投資、資本資産、運転資産の損失の補償のために産業に対して行われる移転は、補助金ではなく資本移転に分類されるほか、〇〇補助金という名称であっても地方公共団体、対家計民間非営利団体などの産業以外の主体に支払われる場合は含まれない。


e 県内雇用者報酬

生産面における雇用者報酬は、県内ベースによるもので、県内での生産活動に労働を提供した雇用者への分配額をいう。県民所得(分配面)における雇用者報酬(県民ベース)とは、県外からの所得(純)のうち雇用者の報酬分だけ差異が生じる。


f 営業余剰・混合所得

営業余剰・混合所得 県内要素所得(純生産) 雇用者報酬

営業余剰は生産活動によって生み出された付加価値のうち企業の営業活動の貢献分であり、企業会計上の営業利益にほぼ相当する。混合所得は93SNAからの新たな概念であり、家計部門のうち個人企業については、事業主の労働報酬の要素も含まれるために混合所得と定義される。営業余剰・混合所得は、市場での利益追求を目的とする産業においてのみ生じ、政府サービス生産者や対家計民間非営利サービス生産者には発生しない。


g 総資本形成にかかる消費税

消費税の課税業者が投資を行った際、その投資財に含まれる消費税額については、自ら納める消費税額から控除することができる。このため、課税業者が投資財の購入に要するコストは消費税抜きの額とみなすことができる。こうした観点から、県内総生産(支出側)における総資本形成(固定資本形成および在庫品増加)の額は消費税額を控除したものを計上する方式をとる。

一方、生産系列からみると、付加価値の額はすべて消費税を上乗せした市場価格で評価せざるを得ない。こうしたことから支出面と生産面を一致させるために、各部門の付加価値の合計から消費税の投資税額控除額を一括して控除する。


h 帰属利子

金融業の生産額を定義するための特殊な帰属計算項目であり、金融機関の受取利子および配当と支払利子の差額をいう。金融機関が受け取る利子は、他産業の付加価値から支払われるので、これを生産として取り上げることは生産額が二重計算になるが、この二重計算を除去するために帰属利子の額を控除することとしている。

SNAでは、帰属利子は産業がすべて中間消費するものとして扱われ、財産所得(家計)や民間最終消費支出には計上されない。その場合、帰属利子を各産業部門に分割することが困難なため、ダミー産業を設けてこの産業が全ての帰属利子を中間投入するものとみなすとともに、同産業に負の営業余剰が生じたものと擬制して計上する。実際の計算としては、経済活動別総生産の最後で一括控除する。


県民所得(分配)

県内の居住者である県民が、生産活動に対してその所有する土地、労働、資本といった生産要素を提供することによって、県内外から受け取る(分配される)現金・現物など所得の総額を計量したものである。なお、ここでいう県民(県内の居住者)とは、個人ばかりでなく企業なども含まれている。


a 県民雇用者報酬

県内に常時居住地を有する雇用者が労働の報酬として、雇い主から受け取る一切の現金および現物給与をいう。

この雇用者報酬は、税金および雇用者の社会保険料負担の控除前で計上され、役員給与手当、議員歳費等、給与住宅差額家賃、雇主の社会負担も含まれる。

(a)賃金・俸給

賃金・俸給は現金および現物給与、役員給与手当、議員歳費等および委員報酬、給与住宅差額家賃、副業所得を加えたものである。

なお給与住宅差額家賃の評価については、原価(公営住宅家賃を実質コストとみる)ではなく、時価(市中平均家賃)を採用している。

また副業所得は、雇用者が本業以外の勤め先をもっている場合、その従たる勤務先から得る所得については雇用者数を把握する際、副業者数を含めて推計する方法をとる(二重雇用、雇用者数を事業所ベースによりとらえている)。

(b)雇主の社会負担

社会負担は、社会保障制度に対する負担であり、現実社会負担と帰属社会負担に分けられる。現実社会負担は、さらに雇主の現実社会負担と雇用者の現実社会負担に分類される。

雇主の現実社会負担は、医療保障、年金給付、労働災害補償、失業保険、児童手当給付などの社会保障基金および金融機関に格付けされる年金基金に対する雇主負担額をいう。

雇主の帰属社会負担は、退職一時金および社会保障基金によらない業務災害補償などの雇主負担額をいう。


b 財産所得(非企業部門)

ある経済主体が、他の経済主体が所有する金融資産、土地および著作権、特許権のような無形資産を使用する場合、それを源泉とする所得の移転をいう。

利子および配当、地代(土地の純賃貸料)、著作権、特許権の使用料などが該当するが、構築物(住宅を含む)、設備、機械など再生産可能な有形固定資産にかかる賃貸料は、サービスの販売とみなされて企業所得に含まれ、財産所得には含まれない。

なお、ここでの財産所得とは、5つの制度部門のうち、(a)~(c)で表章している非企業3部門の財産所得を指し、非金融法人企業、金融機関といった企業部門の財産所得は含まない。

(a)一般政府

県内に所在する市町村、県、国出先機関等事業所(一般会計、非企業特別会計)の財産所得(利子、法人企業の分配所得、保険契約者に帰属する財産所得)の受取、支払を計上する。

(b)家計

家計(個人企業を除く)の利子の受取と支払および配当、保険契約者に帰属する財産所得、賃貸料の受取を計上する。

・利子

受取は、金融資産の所有者として個人が受け取る貨幣所得であり、一般預貯金利子、有価証券利子、信託利子などが該当する。また支払は、家計が消費活動の資金や住宅用資金などの一部として金融機関などから借り入れした資金に対して支払う利子の合計をいう。

なお個人受取分の帰属利子は、企業受取分の帰属利子と同様に中間生産物とするため、利子所得には計上しない。

・配当

個人配当金(個人が法人から受ける利益または利息の配当、剰余金の分配など)および役員賞与からなる。

・保険契約者に帰属する財産所得

保険契約者に帰属する財産所得は、保険契約者の資産である保険準備金の運用から生じる所得であり、生命保険・年金基金・非生命保険の保険帰属収益と、保険契約者配当からなる。この保険帰属収益は、実際には保険企業に留保されるが、いったん保険会社から家計に支払われ、同額が追加保険料として保険会社に支払われるものとして扱われる。

・賃貸料

土地と無形資産(特許権、商標権、著作権)の資産運用に関連して受け取る財産所得に限られ、住宅やその他の建物、機械設備などの賃貸料はサービスの販売(営業余剰を構成)として財産所得には含まれない。

(c)対家計民間非営利団体

対家計民間非営利団体の財産所得(利子、法人企業の分配所得、保険契約者に帰属する財産所得、賃貸料)を計上する。


c 企業所得(配当控除後)

企業所得は、営業余剰・混合所得に企業分の財産所得(受取-支払)の差額を加えたもので、(a)民間法人企業所得、(b)公的企業所得、(c)個人企業所得の3部門別に計上される。

ここで、b財産所得とc企業所得(配当控除後)に含まれる企業分の財産所得は、概念上同じものであるが、分類上は各々に含めて計算している。

(a)民間法人企業所得(配当控除後)

配当控除後の県内民間法人事業所の稼得した所得であり、欄外に参考表示される民間法人企業所得(配当受払前)は、法人事業税の課税および非課税対象所得の合計にほぼ相当する。

(b)公的企業所得

企業および企業特別会計に属する県内の国、県、市町村、公団・公社などの事業所(病院、下水道は除く)の純損益により把握する。

(c)個人企業所得

個人が企業の主体となって、家族や雇用者の労働力を使って運営して得た所得(兼業所得を含む)、内職所得および住宅自己所有による帰属所得からなる。農林水産業とその他の産業および住宅賃貸業のうち持ち家による営業余剰・混合所得の3つに分類して推計される。

・本業および兼業所得

営業余剰・混合所得から財産所得(支払)を控除して求める。個人企業については家計部分と経理が明瞭に区別し難い面があるため、受取財産所得は家計がすべて受け取るものとし、企業所得には含めない。

・持ち家

住宅自己所有による帰属所得であり、帰属営業余剰から住宅資金借入利子と支払賃貸料を控除して求める。


d 県民可処分所得

県民可処分所得は、市場価格表示の県民所得に、県外からのその他の経常移転(財産所得以外の移転)の純受取を加えたものに等しい。すなわち、生産活動によって生み出された要素所得に県外からの移転分を加えたもので、県民全体の処分可能な所得を表している。


県内総生産(支出側)

県内の生産活動によって生み出された所得を支出面(消費および投資)から捉えたものであり、市場価格ベースで評価される。また市場価格表示の県内総生産(支出側)に県外からの所得(純)を加えた額が県民総所得(GDI)である。


a 民間最終消費支出

県内に居住する個人(家計)が行う財貨・サービスの取得に対する支出および対家計民間非営利団体の自己消費をいう。

(a)家計最終消費支出

家計が行う消費活動のための支出をいう。農家における農産物の自家消費、現物給与なども含まれるが、仕送り金、贈与金、罰金、手数料などは移転的なものであり、消費支出とはみなされない。生命保険、年金基金、非生命保険については、サービスチャージ分(保険料-保険金)のみ消費支出に計上している。

(b)対家計民間非営利団体消費支出

対家計民間非営利団体の生産額から家計に対する非商品販売額を控除したものをいう。家計への販売収入は生産コストをカバーし得ず、その差額が自己消費とみなされ計上される。


b 政府最終消費支出

県内に所在する一般政府に該当する事業所の財貨・サービスに対する経常的支出であり、人件費、物件費などからなる。具体的には、政府サービス生産者の生産額(=中間消費+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税)から、他部門に販売した額(商品・非商品販売)を差し引いた額に、現物社会給付などを加えた額を自ら消費したものとして計上する。


c 最終消費支出と現実最終消費

政府や家計等の消費には、各制度部門が実際に負担した額と各制度部門が享受した便益の額という2つの消費概念の考え方がある。前者を最終消費支出、後者を現実最終消費と表章している。

また政府最終消費支出は、個別消費支出と集合消費支出に分けられる。個別消費支出は、医療保険および介護保険によるもののうち社会保障基金からの給付分(現物社会給付)と、教育や保健衛生など政府の個別的サービス活動に関する支出を合計したものである。一方、集合消費支出(=政府現実最終消費)は、外交、防衛や公共の秩序安全などの社会全体に対する公共サービス活動に関する支出をいう。

2つの消費概念の関係を式であらわすと次のようになる。

政府最終消費支出 <個別消費支出> <集合消費支出>
家計現実最終消費 民間最終消費支出 <個別消費支出>
(家計最終消費支出+対家計民間非営利団体最終消費支出) <個別消費支出>
政府現実最終消費 <集合消費支出> 政府最終消費支出 <個別消費支出>

d 総資本形成

民間企業および公的企業(企業および企業特別会計)、一般政府、対家計民間非営利団体、家計(個人企業)が県内において行う投資活動のための支出をいい、総固定資本形成と在庫品増加に大別される。

(a)総固定資本形成

建築物(住宅含む)、構築物、機械設備などへの支出をいう。維持補修費は、中間消費として除外される。土地については、土地造成などによる価値の増加分のみ計上され、土地の購入費や地価の上昇分は計上されない。

また93SNAからは、受注型ソフトウエアなどの無形固定資産についても総固定資本形成に含めることとしている。

(b)在庫品増加

民間企業、公的企業および一般政府が所有する製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産の物量的増減を市場価格評価したものをいう。


e 財貨・サービスの移出入

居住者と非居住者の間の財貨・サービスの取引である。これには、居住者の県外消費、非居住者の県内消費を含む。


f 統計上の不突合

県内総支出と県内総生産は、概念上一致すべきものであるが、推計上の方法や基礎資料が異なっているため、推計値にくいちがいが生じることがある。このくいちがいを統計上の不突合といい、勘定体系の整合性を確保するために表章される。

県民経済計算では、国民経済計算と異なり支出系列に計上する。


g 県外からの所得(純)

県民所得から県内純生産(要素費用表示)を差し引いて求められる。県外との所得の受け払いには雇用者報酬、財産所得などが含められる。


h デフレーター

デフレーターとは、名目値を基準年の価格で評価(実質化)するため、基準年からの物価変動分を除去するために使用される係数(物価調整指数)をいう。

県民経済計算では、従来支出面を実質化し、実質総支出を推計して表章していた。

この県内総支出の実質化においては、県内総支出の構成項目ごとにデフレート(物価指数により基準年の評価額に換算)しているが、総額においてのデフレーターは、各項目ごとに実質化した後、これらの合計額(実質)と名目値の総額の比率で逆算されている。

このような方法で事後的に求められるデフレーターをインプリシット・デフレーターという。

なお、平成16年度より実質化の方法に連鎖方式を導入して生産面での実質化を行い、表章している。


11 勘定体系

主要系列表は、GDPの生産、分配、支出の3面それぞれについて作成され、各主要系列表は1面だけを表すものである。これに対して勘定は、貸方・借方として2面を結びつけてバランス関係を示すものである。5つの制度部門ごとの制度部門別勘定と、制度部門をトータルして全体をまとめあげた統合勘定とがある。

県民経済計算では、(1)県内総生産と総支出勘定、(2)県民可処分所得と使用勘定、(3)資本調達勘定(実物取引)、(4)県外勘定(経常取引)の4種類の統合勘定と、(1)制度部門別所得支出勘定、(2)制度部門別資本調達勘定(実物取引)の2種類の制度部門別勘定を、基本勘定として作成している。


a 統合勘定

(a)県内総生産と総支出勘定

県内における経済活動を総括する県内総生産勘定に当たり、県内総生産の分配面(所得面)での内訳と、支出面での内訳を、貸借の原理により示したものである。

(b)県民可処分所得と使用勘定

県民可処分所得は、市場価格表示の県民所得に県外との経常移転の純受取を加えたものである。また、その処分としては、民間と政府の最終消費支出および県全体での貯蓄が記録されている。この勘定は制度部門別所得支出勘定を統合することにより得られる。

(c)資本調達勘定(実物取引)

資本形成とその資本調達のバランスを示したものである。実物取引と金融取引に区分されるが、県民経済計算では実物取引を記録の対象としている。この勘定は制度部門別資本調達勘定を統合することにより得られる。

(d)県外勘定(経常取引)

県全体として捉えた県外との取引が計上される。この勘定は、県外の視点から記録されているため、県内から見るのとは受取と支払が逆になっている。経常取引と資本取引に区分されるが、県民経済計算の県外勘定では経常取引を記録の対象としている。


b 制度部門別所得支出勘定

この勘定は、非金融法人企業、金融機関、一般政府、家計(個人企業を含む)、対家計民間非営利団体の5つの制度部門別に作成され、生産活動により発生した付加価値がどの部門に配分され、さらにそれらの所得がどのように消費されたかを記録している。

この勘定は、バランス項目としての貯蓄を通じて各制度部門別資本調達勘定に接合している。


c 制度部門別資本調達勘定(実物取引)

この勘定は、非金融法人企業、金融機関、一般政府、家計(個人企業を含む)、対家計民間非営利団体の5つの制度部門別に作成され、資本蓄積の形態とそのための資本調達の源泉を示すものである。

資本調達勘定には実物取引表と金融取引表とがあるが、実物取引表のみ推計している。


その他

a 93SNA

SNAとは、「System of National Accounts」の略称であり、「国民経済計算」または「国民経済計算体系」と訳される。このSNAは、一国の経済について体系的に記録する国際的な基準である。

93SNAとは、1993年に国連が加盟各国にその導入を勧告した国民経済計算の体系の略称であり、日本の国民経済計算では平成12年10月からこの93SNAを使用した推計方式に移行している。

県民経済計算では、すべての都道府県が平成14年度からこの93SNAを使用した推計方式で算出することになっている。


b 移転取引

反対給付を伴わない一方的な資金の受渡し(一方的取引)を移転という。移転取引は、所得支出勘定に記録される経常移転と、資本調達勘定に記録される資本移転に別れる。経常移転は、支払側の資産や貯蓄ではなく経常的な収入から充てられ、また受取側の投資の源泉とならない。一方資本移転は、支払側の資産または貯蓄からまかなわれ、受取側の総資本形成やその他の資本蓄積あるいは長期的な支出の源泉となる。


c 基準改定

GDP統計においては、毎年各種の統計資料を基礎に推計が行われるが、当該統計調査が3年ないし5年ごとに一度しか実施されなかったり、結果が公表されるまでに年月を要したりして、毎年の推計に利用できない場合もある。このため、これらの統計資料の結果がまとまるのを待って、毎年の推計とは別に過年度に遡って改定する遡及改定の作業が行われる。

また実質値は、特定年次の価格で評価されるが、可能な限り最近の経済実態を反映した価格体系により算定するために、評価の基準となる年次を改める作業も5年ごとに行っている。これらの作業を基準改定という。


d 寄与度

GDP全体の変動に対して、各構成項目の変動がどの程度影響を与えているかを示す指標で、式であらわすと次のようになる。

寄与度 前期における構成比 × 当期の前期に対する増減率

e 帰属計算

財貨・サービスの提供ないし享受に際して、実際には市場でその対価の受払いが行われなかったにもかかわらず、それがあたかも行われたかのようにみなして擬制的取引計算を行うことをいう。原則として市場で行われる取引を記録範囲とするが、制度や慣習の異なる各国間の計数比較を可能にするもので、帰属計算には帰属利子、帰属家賃、農家の自家消費などがある。


f 在庫品評価調整

県民経済計算では、発生主義の原則がとられており、在庫品増加は、当該商品の在庫増減時点の価格で評価すべきものとされている。

しかし、入手可能なデータは、企業会計に基づくものであり、企業会計上で認められている様々な在庫評価方法で評価されている。このため、期末在庫残高から期首在庫残高を差し引いて求められる増減額のなかには、生産活動を伴わない期首と期末の評価価格の差による分(一種のキャピタル・ゲインあるいはロス)も含まれている。この評価価格の差による分を除くための調整を在庫品評価調整という。


g 一人当たり県民所得

県民所得を総人口で除したもので、県の平均的な所得水準を示す。なお財産所得や企業所得を含んでおり、賃金水準や個人収入を示すものではない。

一人当たり県民所得 県民所得 ÷ 県民総人口

※ 県民総人口は総務省の都道府県別推計人口を採用


h 経済活動別就業者数および雇用者数

経済活動別の労働投入量を年間平均就業者数、雇用者数で示したものである。

分類はSNA分類による。いくつかの仕事を兼ねている者、あるいは2カ所以上の事業所に雇用されている者などは、相手方でも一人として数えているため、一人を一つの就業に限って数えている国勢調査などの調査とは異なる。


i 連鎖方式と固定基準年方式

名目値の実質化には固定基準年方式と連鎖方式があるが、固定基準年方式の指数(実質値;:ラスパイレス型、デフレーター:パーシェ型)は、相対価格の変化が大きい場合、経年変化するにつれて、「指数バイアス」が係ることが知られている。すなわち、数量と価格に負の関係がある時、ラスパイレス型は上方に、パーシェ型指数の場合下方にバイアスがかかる(いわゆる「代替バイアス」)。

一方、連鎖方式は隣接する2時点間の比較に注目した指数であり、常に前年を基準年とし、それらを毎年毎年積み重ねて接続する方法である。つまり、毎期基準改定しているのと同じことになるため、「指数バイアス」はほとんど生じないとされている。

このため、93SNAでは実質値及びデフレーターの計算においては連鎖方式を採用することが勧奨されている。

なお、連鎖方式では、実質値における「加法整合性」が成立しない。すなわち、固定基準年方式の場合、実質値の内訳項目を合計したものは、集計項目の実質値と一致するが(加法整合性が成立)、連鎖方式では一致しない。つまり、連鎖方式の実質値では単純な足し算・引き算はできない。 また、実質値を用いた割合を計算することにも意味が無い。

このため、連鎖方式では「開差」項目を新たに設けてこれを示している。


j 県民経済計算における実質化方式の変更

国民経済計算では「平成15年度確報」から国内総支出系列については連鎖方式によるデフレーター及び実質値が採用されることとなった。また、「平成16年度確報」からは国内総生産系列に連鎖方式が採用された。

三重県の県民経済計算においては、15年度推計まで支出系列において固定基準年方式による実質化を行っていたが、16年度推計から生産系列で連鎖方式による実質化を導入した。

算出の具体的方法は、主に国民経済計算の経済活動別算出デフレーターと経済活動別中間投入デフレーターを用いて、県内産出額と県内中間投入を連鎖方式で実質化し、その差額を実質の経済活動別総生産額とするダブル・デフレーション方式を用いている。

なお、支出系列では、参考値として従来の固定基準年方式での実質値を算出している。

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