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ひきこもり支援コラムNo.8 「長男の心にある怒りの火の玉が鎮まるまで」

中学1年の7月、長男が学校に行かなくなりました。私が管理職になって5年目の夏、23時過ぎに帰宅したところで妻から報告を受けました。翌朝、出勤を遅らせベッドの横で話しかけました。「学校へ行かなければならない理由」について私なりに3日ほど説得を続けましたが、其の甲斐なく彼の不登校が始まりました。毎日をベッドの中で過ごし、時々友達が家に来てくれることもありましたが、ほとんど会わなかった様です。
 
我家は中学から30m、彼の部屋からは教室が見え校内放送はもちろん、窓越しに生徒の話し声も聞こえました。これらは彼の心を締め付けた事でしょう。校長先生からは何度も呼び出しを受けました。市内の医者や国立病院などにも相談しましたが、本人の通院を促され親の役割を諭されました。要するに親の力でなんとかしてほしい、という話でした。
 
不登校の会にも通いましたが、すぐに良くなるわけでもなく、参加者に「不登校になる原因は、親にもある。学校だけが原因ではない。」と叱咤されたこともありました。自分なりに努力するも、次第に長男は私を避けるようになり、昼夜も逆転し、状況は段々と深刻なものになってきました。
 
カウンセラーからは「彼の心にある怒りの火の玉」を鎮める必要があると言われ、「説教はダメ、核心の話は避けて楽しい井戸端会議を心がけると心の内を吐露する日が来ます」と励まされました。ただ共感して、聴く日々。長男が時折漏らす苛烈な発言にも、「気持ちはよくわかる」と反対しないで受け止め続けました。しかし、私も人間なので当然、疲れは溜まります。

定年直前の59歳からは本格的に家族会に参加し、ピアサポーターの活動も始めました。社会との間で葛藤を抱える当事者の体験発表は過去に自分が抱えていた悩みと重なる部分が多く考えさせられました。自分自身も思春期に強く葛藤を抱えていた経験があり、それは現在の家族との関係も影響していることに気づかされました。

家族会での対話会や研修に参加するうちに、同じ様な境遇の方々と悩みを共有できるようになり気持ちは楽になりました。それに伴い、傾聴や共感が以前よりも自然にできるようになりました。

会話が少なくなっていた妻とも家族会に通う道筋で、若い頃の話や、長男の自立など共通の話題が増え、家庭が明るくなってきました。夫婦で家族会に通うようになって約6カ月後、長男が「居場所や支援機関に行ってみたい」と訴えたことで、事態は急速に動くこととなりました。

その後、長男は週3日ほど居場所に通うようになり、夕食時に友達の話をする様になりました

長男との関係性の構築には課題は残っていますが、先の見えなかった頃と比べれば、ボチボチと前向きな方向に進んでいるのではないかと考えています。