2020年3月ごろから新型コロナの感染拡大という日本のみならず世界の人々の命や健康を脅かす未曽有の事態が起こりました。特に政府が『緊急事態宣言』を出したころ、その影響は教育現場にも及び、急な休校措置が取られたことで子どもたち、保護者、教員たちは、感染の恐怖に加え大きな環境の変化にも対応しないといけなくなりました。実はこのころ、マスコミで予期しない妊娠の相談を受ける窓口の相談件数が増加したという報道がされるようになりました。
筆者が関わる『妊娠SOSみえ』(三重県委託事業)でも、感染拡大による生活面や心理面の影響が出だしたといわれる頃の電話相談件数は昨年より1.4倍と急増しました。「部活もなく暇、SNSで知り合った人と会った」など、明らかに新型コロナの影響と思われる相談も入るようになりました。また6月に始めたLINEを活用した相談には、開始当初から10代の若者の相談が多く入り、月間相談件数がその月の電話相談の1.5倍の時もありました。
新型コロナ禍では、親との関係性の脆弱や、経済的困窮など、それまで表面化しなかった家族の問題が顕在化することもあります。世間で『ステイホーム』と言われても子どもたちの中には『ホーム』が安全・安心ではないこともあります。通常でも思春期の子どもたちの不安定な心理状態にさらに負荷がかかることになり、友人たちとの会話なども制限される中、感情のやり取りができず強い不安を抱えたまま放置され、そして多くの時間をネット利用に費やしていきます。このようなことから、中にはこれらの寂しさや孤独を埋めるため性行動に至るケースなどもあったかと思います。
また学校では外部講師による『性教育』を行うところもありますが、それも、新型コロナ禍に入り中止が相次ぎ、性の知識を正しく学ぶ機会も失うことになりました。この状況だからこそ、周りの大人たちは改めて子どもたちの心と体の健康に気を留めることが必要ではないでしょうか。
文科省は、内閣府と連携して令和2年以降、子どもたちを性暴力の被害者・加害者の当事者に、またその傍観者にしないための教育啓発活動の取り組み強化を図っています。その教育は幼児期から取り組むことになりました。私も長年、地域で子どもたち(保育園児から大学生まで)の「性の健康と人権教育(包括的性教育)を実践してきました。今回文科省が幼児期からを対象者とする方針を打ち立てたことは意義あることと考えます。
幼児期から「自分のプライバシー」について学ぶことは大変重要です。このことは幼いころから教えるとよいといわれており、家庭で保育園等でも教えることをお勧めしています。まずは自分の体を知ること、例えば年齢に応じてからだの各箇所の名称を覚えることも必要だと思います。自分のからだは一生涯、自分のものです。自分のからだや心を大切にすること、そして自分以外の人のからだや心も同じように大切にするということ、を繰り返し学ぶとよいと思います。現代社会はネット情報が氾濫し、幼児期の子どもたちですらタブレットやスマホを扱う時代です。そんな時代だからこそ、幼児期からネットでの性被害等の被害者・加害者にならないための教育を進めることは大切だと考えます。
ぜひ、幼児を持つ保護者の方々に、この幼児期から教える『生命(いのち)の安全教育』にも関心を持っていただき、ご家庭での指針の一つにしていただけるとよいと思います。
(詳しくは文科省のホームページ「生命の安全教育」で検索してみてください。)
(性の安全教育教材(幼児期)PPTデータ文科省より